第43代?元明天皇(げんめいてんのう)が即位され、以降、立派に徳政を積まれております。天皇はわたくし、安万侶に稗田阿礼が暗誦する「帝紀」と「旧辞」を正しく書き記して献上しなさいと命じました。
しかし昔の言葉というものは素朴過ぎて、文章に起こす際に漢字の使い方に難点が生じました。漢字を訓読みで書くと漢字の意味と言いたい言葉の意味とが一致しなくなります。逆に音読みで漢字を使うと文章が冗長になるのです。
それゆえに音読みと訓読みを混在させ、場合によって全て訓読み表記にしました。また判りにくいものは注意書きを入れたりしました。
書き記した時代は天地開闢から第33代?推古天皇(すいこてんのう)まで。
アメノミナカヌシ(天之御中主神)からウガヤフキアエズ(鵜草葺不合命)までが上巻、初代?神武天皇から第15代?応神天皇(おうじんてんのう)までが中巻、第16代?仁徳天皇から第33代?推古天皇までが下巻、合わせて三巻を謹んで献上いたします。
和銅5年(712年)1月28日
正五位上勲五等太朝臣安萬侶