大国主は寝ているスサノオを長い髪を掴むと、部屋の天井の木にぎゅーっと結び、五百人もの人が引っ張るほどの大きな岩を持って来て、部屋の扉を塞いでしまいました。
そしてスセリビメを背負い、スサノオの大きな刀と弓矢と琴も一緒に持ち逃げしようとしました。
ところが琴を木にぶつけてしまい、地面が震えるほどの大きな音を立ててしまいます。眠っていたスサノオは驚いて飛び起きましたが、その衝撃で髪を結んでいた柱が倒れ、屋敷がぶっ壊れてしまいました。
結んだ髪をほどいている間に、大国主とスセリビメは逃亡。
それでもなおスサノオは黄泉比良坂(よもつひらさか?現世と黄泉の国の境目にある坂)まで追いかけて来て、遥か遠くにいる大国主に向かってこう叫びました。
「お前が持ち逃げした刀と弓矢を使って、お前の兄弟の神を山や川に追い払うとよい。
お前は大国主神となり、またはウツシクニタマ(宇津志国玉神)の名で、私の娘を正妻として、宇迦山(うかやま?島根県出雲市)の麓に高い柱を立てて高天原に届くやもしれないほどの高い宮殿に住むといいわい! バーロー」
こうして大国主は刀と弓矢で兄弟の神を山や川へと追い払い、国づくりを始めました。
その後、大国主は最初の話のとおりヤガミヒメと結婚。彼女を出雲に連れて来たものの、正妻のスセリビメの存在を恐れ、生まれて来た子を木の股のところに置いて因幡へと帰ってしまいました。その神は木俣神(きのまたのかみ)と呼ばれています。