スセリビメは大きな盃を手にして、夫に向かってささげ、次のように返歌をしました。
「大国主様。
あなたは男性ですから、訪ねて行く島という島に、あちらこちらの浜辺に、きれいな奥さんがいらっしゃるのでしょう。
私は女性ですから、あなた以外の男はいません。あなた以外の夫はいません。
綾垣(あやがき?絹で作った垂れ幕)がふわりと垂らされた中、カラムシ(イラクサ科の多年草)で作った寝具を被って、コウゾの布団がさすれて音がする中で、
コウゾで編んだ綱のように真っ白な私の腕、淡雪のような私の胸をしっかり抱きしめて、
玉のように美しい私の手を枕にして、足を伸ばして、ゆっくり休んでくださいね。
どうぞお酒を一杯いかが」
こう歌われてすぐ、夫婦の杯を交わし、抱擁して、今に至るまで鎮座しているのです。
これらの歌は神語(かんがたり)と呼ばれています。