その後、山幸彦の妻?トヨタマヒメがやって来て言いました。
「私、赤ちゃんができました。しかももう臨月なのです。でも高天原の神の子を海の底で産むというのは、ちょっとどうかと思って…
だから来ちゃいました」
トヨタマヒメはすぐに海辺で鵜の羽を屋根に葺いた産屋をこしらえました。ところがまだ屋根を全部葺き終える前に急に産気づいたので、即座に産屋に入りました。
今にももう産まれそう。トヨタマヒメは山幸彦にお願いします。
「海の底の国の住人は、出産時はもともと居た国で暮らしていたときの形になって子を産みます。私も元の形になって産みます。なので決して私を覗かないでください」
ところがそれを聞いた山幸彦は、
「おかしなことを言うもんだなあ…」
と思います。こっそり覗いてみると、なんと10mはあろうかという巨大なサメが、腹ばいになってのたうちまわっていたのでした。見てびっくり。恐くなった山幸彦はスタコラサッサと逃げ出しましてしまったのです。