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「よっ、どうだ、中沢、調子は」
「もーっ、最高っすよ」
校舎の廊下歩いてて例の円盤投げしてた顧問に出会った。つい、元気良く返事しちゃったね。
「そうか、そうか。そいつは、よかった」
突き出た腹押さえて満足そうにしてる。単純なやつ。
俺、調子、そんなに良くないのよ。いや、タイムはね、悪くない。
心の問題。
だって、教室にいるときも、グラウンドにいるときも、すぐに伊田のこと考えちゃうんだもの。
だらしねえの。中学生の女の子じゃあるまいし。
こんなのって初めてだね。しかもさ、まだ、手も握ってない。俺、こんどこそ本当にヤキが回ったみたい。
伊田とは、わりと会ってる。
でも、それが中沢君らしくないのよ。ほとんど、俺、追っかけやってんの。毎日電話したり、短い自由時間に(いつも夕食抜くわけにいかないでしょ)無理して出てったり。
土・日だってね、お願いして会ってもらってるみたい。
なんか、おかしなことになってきたねえ。