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やってくれるじゃないの。
広瀬がものすごく積極的。どうせ、また、チンタラチンタラ走ってて、最後に追いかけてくるんだろうと思ってた。そしたら、最初から俺の前に出てくる。こいつがこんな走り方すんの、初めて見た。
嬉《うれ》しくって、ゾクゾクしてくるね。
やっぱ、レースはこうでなくっちゃ。
バック・ストレートはそのまま。俺は広瀬の後ろにぴったりついて行った。抜こうと思っても抜きにくい。俺がしかけると、広瀬が逃げる。かなり速いペース。
直線の向こうに、でっかい青空が見える。俺が初めて八〇〇メートル走った日と同じだ。まっすぐ、まっすぐ走る。そのまま空に飛んでって、吸い込まれそうだぜ。
だけど、俺、ひとの背中見るのは、厭《いや》だ。
ストレートの終わりで広瀬のスピードが鈍ってきた気がしたから、俺、コーナーでもなんでもいいから抜きにかかった。
もう、ここでふたりの勝負に決まった感じね。三位のやつは、七、八メートルぐらい離れてるんじゃないかな。
そしたら、広瀬が少しだけ、アウトへふくらんできた。俺に抜かせないために、なりふりかまわず走路妨害めいたことまでしようっていうの。
いいねえ。
君に欠けてたのは、そういうファイトなのよ。
レースはケンカだ。