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気がつくと、ガンガン音楽が流れていた。
すごいボリューム。頭が割れそう。こんなの聞かされるんなら、もう一回気絶したいくらいだぜ。
上がったり下がったりする歌声。どこかで聞いたことがあるような……。
「おい、高橋、目が覚めたか」
男の低い声。
名前、わかってんの。
て、ことは、誰かに尾行されてて、襲われたのかしら。(俺の尾行してた叔母さんは、どうなった?)
「いいか、おまえは、完全に我々の組織の手に落ちた」
目の前は真っ暗なままなんで、俺、失明したのかと思った。
そしたら、目隠しされてるの。しかも、両手と両足を縛られて、口には、これはガムテープか?
この男は、なんなんだ?
我々の組織って、また、マフィアが現われたのかね。アレは見つかったんだから、借りはないはずなんだけど。
「いいか、二度とMSUに近づくな」
ドスのきいたセリフ。
なんだって?
「高橋、MSUは悪の組織だ。やつらは世界征服をたくらんでいる。おまえにだって、それはわかるはずだ」
何、言ってんだ? わかるはずないだろ。
悪の組織?
世界征服?
だいたい、俺はさあ、MSUなんて、全然、知らないんだぜ。近づこうとも、してない。むしろ、変な手紙もらって、迷惑なくらいなのに。
おかしなやつが、出てきちゃった。
せめて、口がきけるようにしてくれたら、教えてあげられるのにね。
「わかったな。おまえがMSUの活動を行うことは認めない。我々、KSIは、断固として認めないぞ」
え?
なんなのよ、その、KSIって。
まいったなあ、MSUだけで十分ややっこしいのに。
曲が替わった。
前奏に続いて、朗々と張り上げる、突き抜けるような歌声。
俺は気づいた。これは、あの、キタジマサブロウだ、きっと。