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NR(ノーリターン)52
日期:2018-09-30 08:52  点击:313
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 両手を動かすと、なんとかほどけそうだった。
 草と土のにおいがしてる。
 なんか、ホッとしたね。
 だって、俺、さんざん音楽を聞かされて、いろんなこと言われた。あのKSIとか名乗ってたやつに。もう、気い狂うくらいね。
 そのあと、目隠しのままクルマで運ばれた。で、どっかに放り出されちゃった。雰囲気からすると、原っぱみたいなところなのかな。
 しばらくもがいてたら、手を縛っていたロープがほどけた。
 目隠しをはずすと、驚いたな、原っぱどころか、えらい山の中なんじゃない? 草が茂ってる空地みたいなところに、俺、ひとり。
 見上げると、あたりは、木と空だけ。
 どうしようかと思ったけど、アスファルトの舗装道路が木と木の間に見えたんで、そこに出てみた。
 さて。
 俺、まず、からだをほぐした。なんてったって、長い間縛られてたから、固まっちゃってるの。口のまわりは、ひりひり。
 方向は、ふたつにひとつの確率。もちろん、ちょっとでも下ってるほうを選んだ。
 もう、夕方になってた。山道をとぼとぼ歩いてるのって、結構、心細い。クルマも通らない。
 で、十分も歩いたら、家がたくさん見えた。分譲地のようなところ。それで、客をおろしてるタクシーがいたんで、近くの駅まで行ってもらった。
 そしたら、びっくり。なんか見覚えがあるなあって思ったら、病院のある駅なの。だから、そこからは簡単。
 
 アパートメントのドアを開けると、
「お帰りなさい」
 叔母さんが出迎えてくれた。
「遅かったわね。今日は何をしてきたのかしら。新しい発見はあった?」
 笑って、そう言った。
 眉子叔母さんは、尾行のときの上着にミニスカートとは、違った服を着ていた。スウェット素材のね、ふつうの家にいるときのスタイルだ。
「ちょっと待って。すぐに、ご飯の用意ができるから」
 振り向いてリビングに歩いていく後ろ姿を見て、心臓がバクバクした。
 変だぜ。
 どうってことはないはずだ。前を行くのは、いつもの眉子叔母さんだ。
 いったい、どうなってるんだ?
 初めは、俺のからだに何が起こっているのか、理解できなかった。
 信じられない。
 俺ったら、勃起《ぼつき》してる。
 

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