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NR(ノーリターン)63
日期:2018-09-30 08:58  点击:303
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「私ね、水泳を始めたの。スイミング。本当は、バルセローナにいるときみたいにモトクロスがしたいって思ったんだけど。日本ではライセンスの問題があって、練習場でしか走れないらしい。その、練習場っていうのがね、見たことある? すごく狭いのよ。あれも、日本的な、あの盆栽の、箱庭の文化の表われなのかしら」
 日本の文化に関しては意見がないけど、眉子叔母さんがジムに通って泳いでることは、なんでだか、俺は知ってる。
 あらためて考えると、海岸で大型のオフロード・バイクで俺を救出してくれたのは、無免許でだったのか。パトカーを自分で呼んでおいたくせに。
「あなたも泳いでみない? ジムを紹介するわ」
 俺は、水泳にはあまり興味が持てない、と返事した。
「泳ぐのって、とっても気持ちいいのに」
 叔母さんは言う。
 クロールできれいなターンをする、眉子叔母さんの水着姿が目に浮かんでしまう。そう、とっても気持ちいい泳ぎだった。
「水泳で、ひらめ筋って、鍛えられるのかな」
「何、それ」
 俺が、またトラックに行ったって話したから、この会話が始まったのだ。
 でも、眉子叔母さんは、いまひとつ元気がない。そんなに強く、俺に水泳を勧めているわけでもない。
 俺に隠している何かが、やはりあるのだろうか。俺にも、叔母さんに話さないでいることが、増えてきてしまった。
 MSUとKSIのことは、ひとまず忘れておきたかった。
 こういうふつうの話が、眉子叔母さんとできるほうが、俺には嬉しい。まだ、目が合うだけでドキドキしてるから、あまり、ふつうじゃない。
「一度、プールに行ってみたら? スポーツは、陸上競技しかしちゃいけないって、あなたの過去が指定しているわけではないでしょ。過去は捨てて未来に生きるべきよ」
 全然、ふつうじゃないな、やっぱり。

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