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アメリカ嫌い31
日期:2018-10-26 23:59  点击:290
    小さな小さな話
 
 
 やんちゃ坊主が、こんな詩をつくった。
 
  せんせいのちち
   あおき かつじ 6歳
 せんせいのちちいろた
 せんせいがとばんに
 じいかきよってんとき
 いすのうえにあがって
 うしろからつかんだ
 しろいたいそうふくのうえから
 てをいれた
 まるこて
 やろこて
 ぬくかった
 
 子どもは母親ともども呼び出され、セクハラ行為だと、きびしく叱責《しつせき》されたか。
 そうならなかった。いや、このやんちゃ坊主を受け持った若い先生は、そうしなかった。
 そのことを詩に書かせ、印刷して子に渡し、その文集を家庭にとどけさせた。
 親は恐縮し、その若い先生の寛大さと、子どもへの愛情をしみじみ感じた。
 やんちゃ坊主は、この先生を一生忘れないだろう。
 そんなふうなことを思う。
 こんどは保育園の若い保母さんの話だ。
 菜っ葉がどうしても食べられない子がいた。
 お菜っ葉は体によいから、がんばって食べましょうね、とその保母さんはいわなかった。子どもたちと話をした。
「お菜っ葉はどうして緑色なのか知ってる?」
「どうしてかな、どうしてなの」
「それはね、お菜っ葉はね、お日さまを食べるからなの」
「お日さまを食べるの」
「お日さまの光を、いっぱいいっぱい食べて、こんなきれいな色になるの」
 利発な子がいった。
「じゃ、お菜っ葉を食べたら、わたしらもお日さまを食べたことになるゥ?」
「そうね。お日さまの光を食べたことになるんでしょうね、きっと」
「わたしらはお日さまの子?」
「そう。子どもはみんな、お日さまの子よ」
 菜っ葉の食べられない子は、そのやりとりをじっときいていた。
 まわりの者が、なにもいわなかったのに、その子は菜っ葉を少しずつ口に運ぶようになった。
 この話をきいてから、わたしはサイン会などで色紙を頼まれると
 
 いつも
 太陽の子で
 
 と書くようになった。
 若い先生の、ほんの小さな小さな話ではある。ほんの小さな小さな話をわたしは書き、それをみなさんが読んでくださる。
 平和というものはありがたいもので、ふと気がつくと、そのことに感謝する自分を発見する。
 一方、同じ地球上でトルネードだのミサイルだの経済封鎖などという、おぞましいものの下で傷ついたり、死んでいった子がいる。
 政治の指導者に、どうか、この小さな話がとどきますように——。

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