か弱き亭主族
女房を痛み入らせて医者帰り
どこといって悪いところはないのに、目がおちくぼんで、やせおとろえている。それとあべこべに、枕もとにすわっている女房は、小ぶとりでつやつやとしている。こんなのは医者でなくったって、おおよその見当はつく。
——奥さん、ほどほどになさらんと、取りかえしのつかぬことになりますぞ。
と、別室で痛み入らせておいて、亭主に対しては、
養生の一つはこれと手でおしえ
と、例のかっこうをして見せているうちはいいのだが、回診するたびに、いよいよ亭主はおとろえて、女房はみずみずしくなっていく。
看病が美しいので匙《さじ》を投げ
過ぎたるは医者の匙にも及ばざる
まことに過ぎたるは及ばざるがごとく、薬石効なく一巻の終わりとなっては、なにをか言わんやである。
だがまあ、そういうお盛んな時期もなんとか切りぬけると、いわゆる倦怠期にはいり、攻撃精神はとみにおとろえて、夫婦の仲もお茶漬の味となる。