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神州天馬侠08
日期:2018-11-30 17:57  点击:262
 黒衣の義人
 
    一
 
 山大名《やまだいみよう》の根来小角《ねごろしようかく》の殿堂《でんどう》は、七つの洞窟《どうくつ》からできている。その七つの洞穴《ほらあな》から洞穴は、縦《たて》に横に、上に下に、自由自在の間道《かんどう》がついているが、それは小角ひとりがもっている鍵《かぎ》でなければ開《あ》かないようになっていた。
 また、そとには、まえにもいったとおり、二つの洞門《どうもん》があって、配下の野武士《のぶし》が五人ずつ交代《こうたい》で、篝火《かがりび》をたきながら夜どおし見はりをしている厳重《げんじゆう》さである。
 今宵《こよい》もこの洞門のまえには、赤い焔《ほのお》と人影がみえて、夜ふけのたいくつしのぎに、何か高声《たかごえ》で話していると、そのさいちゅうに、ひとりがワッとおどろいて飛びのいた。
「なんだッ」
 と一同が総立ちになったとき、洞門のなかからばらばらととびだしてきたのは七、八ひきの猿《さる》であった。
「なんだ猿《さる》じゃないか、臆病者《おくびようもの》め」
「どうして檻《おり》からでてきたのだろう。咲耶子《さくやこ》さまのかわいがっている飼猿《かいざる》だ。それ、つかまえろッ」
 と八ぽうへちってゆく猿《さる》を追いかけていったあと、留守《るす》になった二の洞門《どうもん》の入口から脱兎《だつと》のごとくとびだした影《かげ》! ひとりは黒装束《くろしようぞく》の覆面《ふくめん》、そのかげにそっていたのは、伊那丸《いなまる》にそういなかった。
「何者だッ」
 と一の洞門では、早くもその足音をさとって、ひとりが大手をひろげてどなると、鉄球《てつきゆう》のように飛んでいった伊那丸が、どんと当身《あてみ》の一|拳《けん》をついた。
「うぬ!」と風をきって鳴った山刀《やまがたな》のひかり。
 よろりと泳《およ》いだ影は、伊那丸のちいさな影から、あざやかに投げられて、断崖《だんがい》の闇《やみ》へのまれた。
「曲者《くせもの》だ! みんな、でろ」
 覆面の黒装束へも襲《おそ》いかかった。姿《すがた》はほっそりとしているのに、手練《しゆれん》はあざやかだった。よりつく者を投げすてて、すばやく逃げだすのを、横あいからまた飛びついていったひとりがむんずと組みついて、その覆面の顔をまぢかく見て、
「ああ、あなたは」と、愕然《がくぜん》とさけんだ。
 顔を見られたと知った覆面は、おどろく男を突ッぱなした。よろりと身をそるところへ、黒装束の腰からさッとほとばしった氷の刃《やいば》! 男の肩からけさがけに斬《き》りさげた。——ワッという絶叫《ぜつきよう》とともに闇《やみ》にたちまよった血けむりの血なまぐささ。
「伊那丸さま」
 黒装束《くろしようぞく》は、手まねきするやいなや、岩|つばめ《ヽヽヽ》のようなはやさで、たちまち、そこからかけおりていってしまった。
 

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