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神州天馬侠26
日期:2018-11-30 18:28  点击:276
 大鷲の鎖
 
    二
 
 忍剣は数珠《じゆず》をだして、しばらくそこに合掌《がつしよう》していた。すると、番小屋のなかから、とびだしてきた侍《さむらい》がふたり、うむをいわさず、かれの両腕をねじあげた。
「こらッ、そのほうはここで、なにをいたしておった」
「はい、国師《こくし》さまはじめ、あえなくお亡《な》くなりはてた、一|山《ざん》の霊《れい》をとむろうていたのでござります」
「ならぬ。甲斐《かい》一帯《いつたい》も、いまでは徳川家《とくがわけ》のご領分だぞ。それをあずかる者は、ご家臣の大須賀康隆《おおすかやすたか》さまじゃ。みだりにここらをうろついていることはならぬ、とッととたちされ、かえれ!」
「どうぞしばらく。……ほかに用もあるのですから」
「あやしいことをもうすやつ。この焼けあとに何用がある?」
「じつは当寺の裏山、扇山《せんざん》の奥に、わたしの幼《おさな》なじみがおります。久しぶりで、その友だちに会いたいとおもいまして、はるばる尋《たず》ねてまいったのです」
「ばかをいえ、さような者はここらにいない」
「たしかに生きているはずです。それは、友だちともうしても、ただの人ではありません。クロともうす大鷲《おおわし》、それをひと目見たいのでございます」
「だまれ。あの黒鷲は、当山を攻めおとした時の生捕《いけど》りもの、大せつに餌《え》をやって、ちかく浜松城へ献上《けんじよう》いたすことになっているのだ、汝《なんじ》らの見せ物ではない。帰れというに帰りおらぬか」
 ひとりが腕《うで》、ひとりが襟《えり》がみをつかんで、ずるずるとひきもどしかけると、忍剣《にんけん》の眉《まゆ》がピリッとあがった。
「これほど、ことをわけてもうすのに、なおじゃまだてするとゆるさんぞ!」
「なにを」
 ひとりが腰縄《こしなわ》をさぐるすきに、ふいに、忍剣の片足が|どん《ヽヽ》と彼の脾腹《ひばら》をけとばした。アッと、うしろへたおれて、悶絶《もんぜつ》したのを見た、べつな侍《さむらい》は、
「おのれッ」と太刀の柄《つか》へ手をかけて、抜きかけた。
 ——それより早く、
「やッ」と、まッこうから、おがみうちに、うなりおちてきた忍剣の鉄杖《てつじよう》に、なにかはたまろう。あいては、|かッ《ヽヽ》と血へどをはいてたおれた。
 それに見むきもせず、鉄杖をこわきにかかえた忍剣はいっさんに、うら山の奥《おく》へおくへとよじのぼってゆく。——と、昼なおくらい木立のあいだから、いような、魔鳥《まちよう》の羽《は》ばたきがつめたい雫《しずく》をゆりおとして聞えた。

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