春を思う
笑海叢珠
ある役人が尼寺に泊ったが、夜中に牝(めす)猫が鳴いてうるさいので、
「いったい、あの猫はどうしたのです」
というと、尼僧は、
「あれは、春を思って鳴いているのですわ」
と答えた。役人が笑って、
「庵主(あんじゆ)さんは春を思わないのですか」
ときくと、
「いつも思っております。ただ、牝猫のように声に出さないだけですわ」






