石人(せきじん)
笑海叢珠
ひどい近眼の男、道に迷い、墓地の入口に立っている石人(せきじん)(石像)を人かと思って近づいて行くと、石人の頭にとまっていた鳥がぱっと飛び去って行った。男は石人に道をきいたが、もとより答えるはずはない。
「なんで教えてくれぬ」
と男はいった。
「おまえが教えてくれぬ気なら、おれだって、さっき風が吹いておまえの頭巾(ずきん)が飛んで行ったことを教えてやらぬぞ」