蓆(むしろ)
笑府
近眼の男、川のほとりで渡し舟を待っていたが、なかなか来ない。いらいらしているとき、藁蓆(わらむしろ)が流れてくるのを見て、薪(まき)を積んだ舟かと思い、
「おい、乗せてくれ」
とたのんだが、蓆はどんどん流れて行く。男は岸を追って行って飛び乗ったが、そのとたんに水の中へ沈んでしまった。
ようやく浮きあがると、舟で助けにきた人に向っていった。
「おまえがおれを乗せてくれないものだから、おまえの薪まですっかり川の中へひっくり返ってしまったじゃないか」