迂回路にキュウピイさんの行きだおれ
言葉が投げ出されたような唐突な一句である。「迂回路」とは何からの迂回路なのか、「キュウピイさん」はおなじみのあの裸の赤ちゃん人形だろうが、それが「行きだおれ」ているとはどういうことか。裏路地に人形が打ち捨てられている光景を想像することもできるが、それよりも先に伝わってくるのは、一言でいえば、全面的な「どうしようもなさ」の感覚である。一句は、「キュウピイさん」に一種の自己イメージを示しているだろう。常道から外れた(と意識される)道を、成熟に至らないままにとぼとぼと歩いて、最後は「行きだおれ」てしまう。現代人が感じる現実の苦みだろう。