自販機の中に雨降る ボトル落つ
写生が効いた句。自販機の中でパーティーのような光景が繰り広げられているコカコーラのテレビCMがあったが、確かに、コインを入れてボタンを押し、お目当てのドリンクが落ちてくるまではブラックボックスであり、中で何が起こっているかは私たちには分からない(もちろん、機械の仕組みは調べれば分かるが、それとは別の次元での話)。たとえ一瞬であっても、まったくの空白の時間がある。この句はその一瞬に「雨降る」という光景を挿入する。この雨を何の象徴ととっても読者の自由であるが、重要なのは、ここに実体的なイメージが差し挟まれたということだ。現実の揺らぎをすくいとった好句だろう。