累計や劣化してゆく天の川
切字「や」と季語「天の川」が入ってかたちの整った句だが、美的世界として完結することなく、その美は読者に向けられた刃として鋭く光っている。「人が死んだら星になる」というメルヘンチックな考え方を延長し、「累計」で換算されてしまうような過剰にアンバランスな人類の状況が天空にも反映しているという。大きな景や事象を出せば普通は現実が相対化されるのだが、現代に対する冷やかなこの句の視点はむしろ、巨大なスケールで展開している現実を相対化不可能なものとして突きつけてくる。