麦熟れて父の位牌のあおあおと
「麦熟れて」「父の位牌の」「あおあおと」、この三つのパートのつながりは不思議。言葉の並びからすれば、「父の位牌」が「あおあおと」しているのだが、位牌があおあおとしているとは普通の感覚では思わないに違いない。ところが「麦熟れて」というこの世の生のひとつの極みを示すイメージが前に置かれることで、死のシンボルであり、また物としても非生物である「位牌」が命を吹き込まれるようだ。それが「あおあおと」につながる。生と死が相互に浸透しあうことがあるのを実感させてくれる。