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正しい乙女になるために15
日期:2020-10-28 18:10  点击:273
 花咲くエメラルドのお城の星の歌
 
 G・Sが大好きです。ひと昔前に流行ったネオG・Sではなくて、最近脚光を浴びるB級G・Sの類でもなくて、正統派のA級G・S。作詞作曲はプロに任せ、フリフリの王子様衣装を着せられて、ともすれば演歌のような楽曲をかん高い声でナヨナヨと歌う(おまけに、どいつも下手くそだ)歌謡曲は、まさに乙女の大音楽、もう失神しちゃいそうです。
 ザ・タイガースやザ・テンプターズ、当時大人達が「きっと女のコは、こーゆーのを求めてるんだろーなー」と一生懸命考え、間違った認識の下に詰め込んでシェイクした乙女のミックスジュースは、まるで宝塚歌劇みたく、不自然でフェティッシュなモンスターになってしまいました。だって歌詞をご覧になって下さい。スゴいんですもの。「僕のかわいい友達は/白いテラスに囲まれた/夢のお城にすんでいる」(オックス「ガール・フレンド」)。「花つむ娘たちは/日暮れの森の/湖に浮かぶ白鳥に/姿をかえていた」(ザ・タイガース「花の首飾り」)。一体これは何処の国の情景なんざましょ? ファンタジーという言葉で包括するには、余りにも過剰過ぎるポエジー。テンプターズには、恋人が無理矢理宮殿に連れ去られてしまう男の嘆きの歌がありますが、その理由は彼女の家が「年貢」を払えなかった為で、ここまでくるともうなにがなんだかさっぱり解りません。繰り返されるキーワードは、「星」「花」「湖」「森」。チープな少女漫画的観念の純粋物質です。
 記号的なフィクションの恋愛歌。歌というものが「恋愛をネタにする」ことを逃れ難いテーゼとしているのなら、大笑いしてしまう程の大袈裟さは、かえってニューウェイヴなハードボイルド精神を感じさせます(当時は、真剣だったのかもしれないけど)。現在巷に溢れている、妙に生々しい応援歌調のニューミュージック程、気持ちの悪いものはありません。とりたての魚は新鮮で美味しいのかもしれませんが、ギミックで上品な僕達には生臭さが鼻につき過ぎます。象徴派の詩人達を力で捩《ね》じ伏せたようなレトリック、心のウェットを、きらびやかでちょっぴり滑稽な宝石の中に閉じ込めて結晶化させてしまうことは、乙女のたしなみです。G・Sという歪んだ少女趣味の卵の中に、僕達は恋の妄想を安心して託すことが出来ます。そう、やっぱり恋する人には白馬に乗って迎えにきて欲しいですものね。中途半端な現実肯定はつまりません。気恥ずかしくって、お友達にはいえないですけれど。

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