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正しい乙女になるために45
日期:2020-10-28 18:30  点击:540
 ナルシス、此れ、プシケの夢
 
 近頃はもう「自分はナルシストであります」と宣言することに罪悪感を覚えなくなってしまいました。響きとしてはナルシストよりはオナニストのほうがしっくりとくるのですが、オナニストといってジャン・ジュネを想起してくれる人も少ないので、とりあえずはナルシストの肩書きで我慢しておきましょう。
 さて、ナルシストとは鏡をみてうっとり、自分の技能・才能に自惚れた鼻持ちならない自尊心のかたまりというのが一般的なイメージでしょう。勿論、全てあてはまります。が、ナルシストの道はもっと深遠なる魔道の迷宮なのです。ナルキソスの神話のとおり、自らにエロスを感じ、それを客体として徹底的に愛さなければならないのです。最愛の恋人よりも親兄弟よりも深く激しく、汝、自らを愛さなくてはなりません。これは利己主義という単純なものではありません。生存本能を排した部分でなおかつ自分に対して恋愛感情を抱く不健全さとは、DNAの法則を逆行する精神の閉ざされた放蕩であり、ツァラトストラの孤高なる哲学的意志力を必要とします。貴方はこの世界に独りっきりの快楽を享受出来るでしょうか。ナルシストも他者を必要とします。しかしナルシストにおける他者とは自らの内に存在する他者なのです。分裂症になる以外、私と私は完全なる結婚が出来ません。理性を持ち続けるなら、これは不可能性の恋愛なのです。
 乙女の倫理はナルシシズムにあります。フリルもリボンも、私が私に愛される為の小道具です。乙女の行動が時に退行現象と受け取られるのも、性を排除するように見受けられるのも、全てはこれが原因です。他者とのコミュニケーションに重点を置かず、自己の中の他者とコミュニケーションをとると、表面上そのようにみえてしまうのです。相手が自分の理想通りでないと幻滅してしまいます。それを相手の人格を尊重しない精神的成長のなさと責められても困ります。相手なんて最初から存在しないのですから。現象としての相手は自分の中にいる相手の影に過ぎないのですから。
 僕は自分に似た人しか愛せません。自分の等身大の蝋人形を作って貰うのが僕の夢です。気持ち悪いとお思いでしょう。だけど、全然平気です。だって、野ばらちゃんだけが僕のことを解ってくれればいいのですもの。

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