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正しい乙女になるために62
日期:2020-10-31 19:12  点击:252
 元旦の君は髑髏の大振袖
 
 HERMES のスカーフはどー考えてもやっぱり変な図柄、すごく悪趣味だと思うのです。だって、最もポピュラーな模様が、蹄鉄ですよ、蹄鉄! そんなもの何で首に巻かねばならぬのでしょう。パンクスでもあるまいし。でも、これは HERMES が馬具メーカーより始められたことを考慮すれば致し方ないこと。日本人の感覚ではとうてい理解出来ませんわ。そういえば、お着物にも HERMES の蹄鉄と同じくらいにとんでもない図柄が多くございます。特に大正から昭和の初期にかけての図柄には、飛行機柄のものとか戦車柄のものとか、呆気にとられるものが多数。しかしこれは変だと思いつつも皮膚感覚で理解出来るのです。嗚呼、そんな時、僕は自分の身体の中に日本民族の血が滔々《とうとう》と流れていることを確認するのであります(ウソ)。伝統というものは侮れませんねぇ。
 フランス人がどうやったってお着物が似合わないように、日本人に HERMES は似合わない。ですからやはり僕達はお着物を着なければなりません。昨年秋冬(九六年)の COMME des GARCONS のコレクションは、実に素晴らしいものでした。誰がこんなの街で着るんだというお布団みたいなもこもこのお洋服。あれはお着物ですわねぇ。川久保玲はお着物の伝統をアレンジなさるのが天才的にお上手。山本耀司だと和服然とし過ぎてどうも野暮ったいし、三宅一生では民俗学的過ぎますしねぇ。川久保玲のお着物に対する視線はヨーロッパ人のそれ。エキゾチシズムの視線をヨーロッパにも日本にも媚びることなく消化なさいます。お着物の方法論をゴシック趣味にもロココ趣味にも世紀末的耽美主義にも再構築してしまう川久保玲の魔法。セザンヌやクリムトに見せてあげたかったですわ。
 香水に目覚め、オートクチュールに目覚めた最近の僕の次なる目標はお着物。知人の祖父は着物の裏地に髑髏《どくろ》の刺繍を施していたのだそう。悪趣味かつエレガントなものを探求しようと思えば、日出ずる国の僕達はお着物にしか術を持てませぬ。さて、一月は何かとお着物を着る機会が多ございますね。この際、お母様、お祖母様におねだりしてしまいましょうよ。丸洗いできるニューキモノなんてふざけたものはいけません。狙うは縮緬《ちりめん》の大振袖。柄は金魚か髑髏か、パンダさん。そんなお着物で君が走ってきたならば、僕は銀の簪《かんざし》を買ってあげませう。

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