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芥川龍之介歌集:客中恋
日期:2021-06-06 23:58  点击:262

客中恋


初夏の都大路の夕あかりふたゝび君とゆくよしもがな

海は今青き※(「目+匡」、第3水準1-88-81)をしばたゝき静に夜を待てるならじか

君が家の緋の房長き燈籠も今かほのかに灯しするらむ

都こそかゝる夕はしのばるれ愛宕ほてるも灯をやともすと

黒船のとほき灯にさへ若人は涙落しぬ恋の如くに

幾山河さすらふよりもかなしきは都大路をひとり行くこと

憂しや恋ろまんちつくの少年は日ねもすひとり涙流すも

かなしみは君がしめたる其宵の印度更紗(いんどさらさ)の帯よりや来し

二日月君が小指の爪よりもほのかにさすはあはれなるかな

何をかもさは歎くらむ旅人よ蜜柑畑の棚によりつゝ

ともしびも雨にぬれたる甃石(しきいし)も君送る夜はあはれふかゝり

ときすてし絽の夏帯の水あさぎなまめくまゝに夏や往にけむ

※(ローマ数字VIII、1-13-28) ※(ローマ数字XI、1-13-31) ※(ローマ数字X、1-13-30)※(ローマ数字IV、1-13-24)



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