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红色独角仙(2)
日期:2021-08-07 23:54  点击:301


 森の中の、ふるいせいようかんのまどから、小さい女の子が、たすけをもとめてなきさけんでいた、そのあくる日のこと。
 ミドリちゃんのにいさんの木村敏夫くんは、さっそく、このことをしょうねんたんていだんちょうの小林(こばやし)くんに知らせましたので、小林だんちょうが、木村くんのうちへやってきました。
 そして、ふたりで森の中のせいようかんをたんけんすることになりました。まっぴるまですから、こわいことはありません。でも、ふたりとも、たんてい七つどうぐのかいちゅうでんとうや、きぬ糸のなわばしごや、よぶこのふえなどは、ちゃんとよういしていました。
 小林だんちょうと木村くんは、うすぐらい森の中をとおって、おばけやしきのせいようかんのまえに来ました。入口のドアをおしてみますと、なんなくひらきました。かぎもかかっていないのです。ふたりは中へはいり、ひろいろうかを、足音をたてないようにしてしのびこんでいきました。
 かいちゅうでんとうをてらし、長いあいだかかって、一かいと二かいのぜんぶのへやをしらべましたが、だれもいないことがわかりました。まったくのあきやです。
「どうも、このへやがあやしいよ。なぜだかわからないが、そんな気がするんだ。」
 一かいのひろいへやにもどったとき、小林くんが、ひとりごとのようにいいました。すると、ちょうどそのとき……。
 どこからともなく、かすかに、かすかに、
「おじさん、かんにんして。あっ、こわいっ……たすけてえ……。」
というひめいがきこえてきました。小さい女の子の声のようです。
 ふたりはぞっとして、たちすくんだまま、かおを見あわせました。
「ゆか下からきこえてきたようだね。」
 小林くんが、くびをかしげながらいいました。するとまた、
「あれっ、いけないっ。早くたすけて。」と、かすかな声が……。
「どこかに、かくし戸があるにちがいない。どこだろう。」
 小林くんは、かいちゅうでんとうをてらして、へやじゅうをさがしまわりました。
 そのへやには、大きなだんろがついていて、そのだんろの下がわに、まるいぼっちが、ずっとならんでいます。かざりのちょうこくです。小林くんは、そのぼっちを一つ一つ、ゆびでおしてみました。すると、右から七ばんめのぼっちが、ちょうどベルのおしボタンのように、うごくことがわかったのです。小林くんは、それをぐっとおしてみました。すると……。
 ガタンという音といっしょに、「あっ。」というさけび声。びっくりしてふりむくと、いままでそこにいた木村くんのすがたが、きえうせていました。
 小林くんはびっくりして、そこへかけつけました。すると、ゆかいたに、四かくいあながぽっかりとあいていることがわかりました。ちかしつへのおとしあなです。小林くんが、だんろのぼっちをおしたので、それがひらいたのです。
「木村くん、だいじょうぶか。」
 あなの中へ、かいちゅうでんとうをむけてよんでみました。
「う、う、う……だ、だいじょうぶだっ。」
 木村くんがくるしそうにこたえました。見ると、あなの下に、すべりだいのようないたが、ずっとつづいています。小林くんは、思いきってそこへとびおりました。
 すうっ……とすべりました。そして、どしんと、ちかしつのかたいゆかに、しりもちをつきました。
 やっとのことでおき上がって、かいちゅうでんとうをてらしてみますと、そこは十じょうほどの、ひろいちかしつでした。しかし、ひめいをあげた女の子のすがたは、どこにも見えません。むこうのかべに、まっくらなほらあながあいています。そのむこうに、べつなちかしつがあるのでしょうか。
「あっ、きみ。あれ、なんだろう。」
 木村くんが、おびえた声で、そのほらあなをゆびさしました。
 ふたりのかいちゅうでんとうが、ぱっと、そこをてらしました。
 まっくらなほらあなのおくで、ぎらぎら光った、二つのまるいものが、ちゅうにういているのです。そしてそれが、だんだんこちらへ近づいてくるではありませんか。
 かいぶつの目です。なにかしらおそろしいものが、こちらへやってくるのです。まるでヤドカリが、かいがらの中からかおを出すように、それが、にゅっとくびを出しました。
「あっ。」
 ふたりは、思わず声をたてて、おたがいのからだをだきあいました。
 そのからだは、まっかでした。まっかな長い、大きなつの。そのねもとに、ぶきみなとんがった口。二つのぎらぎら光る目。おれまがった六本の長い足……。それは、にんげんほどの大きさの、まっかなカブトムシだったのです。
 ああ、ふたりはどうなるのでしょう。
 さっき、ひめいをあげたかわいそうな女の子は、いったいどうしたのでしょうか。


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