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怪指纹:戴眼罩的男人
日期:2021-08-15 23:19  点击:309

眼帯の男


 それから十分余りの後、例の神社の鳥居の前で車を捨てた二人は、暗闇の森の中へ入って行った。
 向うにチラチラする幽かなる光を目当てに社殿の裏へ近づくと、そこに三人の黒い人影が、手に手に懐中電燈をかざして佇んでいた。モーニング姿の宗像博士と制服の二人の警官である。あとで聞けば、それは博士の知らせによって、附近の交番から駈けつけた警官達であった。
「宗像さんですか。中村です。丁度明智君を訪ねていましてね、捜査課から電話の知らせを受けたものですから、明智君と一緒に駈けつけたのですよ。警視庁からも間もなくやって来るでしょう」
 闇の中で、中村警部が挨拶すると、宗像博士は、明智と聞いて一歩前に進み出でた。
「オオ、明智さん、お帰りになった事は新聞で承知していました。あなたのお留守中に、僕は途方もない難事件を引受けさせられてしまいましてね。やっと犯人を追いつめたかと思えば、ごらん下さい、この始末です」
 博士は弁解でもするような調子で云いながら、社殿の床下へ懐中電燈の光を向けた。
「アッ、これは……」
 中村警部が、驚きの余り、思わず叫び声を立てた。
 それも無理ではない。社殿の床下、懐中電燈の丸い光の中に、まざまざと浮き出していたのは、無残な生人形のような、血みどろの死骸であった。
 黒い背広の胸が開いて、その白いシャツが真赤に染まり、血の塊が電光を受けて、ギラギラと毒々しく光っていた。ソフト帽が脱げて、長い黒髪が乱れ、土気色(つちけいろ)になった女の唇から顎にかけて、一筋二筋、赤い毛糸のような血が流れていた。女の右手には五寸程の白鞘(しらざや)の短刀が握られ、その刃先にベットリ血のりがついている。
「自殺ですね。しかし、どうしてこんなことに……」
 警部の言葉を受けて、宗像博士が申訳なさそうに説明した。
「僕の手抜かりでした。あなたに報告して、警察の手で、あの空家の捜索をして頂けばよかったのです。しかし、決して抜けがけの功名をしようとした訳ではありません。確信がなかったのです。若しやという想像ぐらいで、警察を(わずら)わす気になれなかったのです。兎も角、その想像が当っているかどうか、僕自身で確めて見ようとしたのです。
 すると、僕のその想像は当りすぎる程当っていました。そして、この女をここまで追跡して、なんなく捉えてしまったのです。ところが、何を云うにも僕一人だったものですからね。自動車を探すのに、この女を引きつれて歩く訳にも行かず、それよりは、電話でお知らせして、あなた方に来て貰った方がと考えたのです。
 で、僕はこの女を、ここの床下の柱に縛りつけて置いて、近所の商家まで電話を借りに走ったのです。その商家の人に頼んで、交番にも知らせて貰ったのです。ホンの五分間程ここを留守にしたばかりです。
 ところが、帰って見ると、この始末じゃありませんか。どうして解いたのか繩目を解いて、見事に心臓を突いて自殺していました。まさか短刀など隠していようとは思いも及ばなかったのです」
 宗像博士は大切な犯人を殺してしまった失望に、説明もしどろもどろであった。
 成程、死人の身体には、解けた細紐が幾重にも纒いつき、その端が(そば)の柱に括りつけてあった。宗像博士が、常に身辺を離さぬ、絹糸製の丈夫な細紐である。
「どうしてこれを解くことが出来たんだろう。まさか縛り方が悪かったのではないでしょうね」
 明智は柱の側にしゃがんで、その細紐を調べながら、半ば独言のように呟いた。
「僕もそれを不思議に思っているのです。捕繩(ほじょう)のかけ方ぐらいは心得ているつもりですが」
 博士も不審に耐えぬ面持だ。
「宗像さん、この女は自殺したのではないかも知れませんね」
 明智がふと何かに気附いたらしく、妙なことを云い出した。
「エッ、自殺でないというと?」
 宗像博士も中村警部も、意外な言葉に、明智の顔を覗くようにして、聞き返す。
「他殺ではないかと思うのです。誰かがこの女の心臓を抉って、その短刀を死人の手に握らせた上、自殺と見せかける為めに、あとから繩を解いて置いたとも考えられますからね」
「しかし、誰が何の為めにそんな真似をしたのでしょう。犯人に恨みを含むものが、この森の中に忍んでいたとでもいうのですか」
 宗像博士は腑に落ちぬ様子で、明智の軽率な判断をなじるように云った。
「イヤ、必ずしも恨みを含む者とは限りません。宗像さん、僕はさい前、中村君から、事件の経過を詳しく聞いたのですが、この事件には、男装の女らしい小柄な犯人の外に、もう一人、一方の目に眼帯をあてた大男がいるというではありませんか。
 犯罪者が一身の安全を計る為めに、仲間を殺すというのは、例のないことではありません。僕は何だか、その辺の闇の中に、まだ眼帯の大男が身を潜めて、僕らの話を聞いているような気がするのですよ。つい身近にそいつの気配を感じるのですよ」
 明智は闇の中の宗像博士の側に近よって、そのモーニングの腕を、指先で注意を促すように軽く叩きながら、声を低めて云うのであった。
「なぜです。仮令共犯者がここへ来たとしても、何もこの女を殺すことはないじゃありませんか。単に繩を解いて連れ去ればすむことではありませんか」
 博士は彼の優れた商売敵を、嘲笑うかのような口吻(くちぶり)であった。
「しかし、彼としては、我々の常識では判断の出来ない深い事情があったのかも知れませんよ。宗像さん、僕はこの事件の全体の経過を、静かに考えて見て、どうもそんな気がするのです。なぜ眼帯の男は、共犯者を救わないで、その命を絶たなければならなかったか。そこにこの事件の恐ろしい謎があるのじゃないかと、そんな風に感じているのです」
「感じですか?」
 宗像博士は一層皮肉な調子になった。だが、明智は少しもひるまない。
「そうです。僕はまだ明確に云うことは出来ないのです。しかし、この事件は最初から、理論を超越して、狂気と魔術に満ちていたではありませんか。犯人は、あらゆる不合理と不可能を易々と()しとげているのです。救うべき共犯者を殺すなども、彼の狂気と魔術の一つの現われでないと誰が断言出来ましょう。眼帯の男は、なぜ北園竜子を殺さなければならなかったか。実に面白い謎々ですね。この難題が解けさえすれば、事件の全貌は自ら明かになって来るのじゃないでしょうか」
 明智は言葉以上に、事件の奥にあるものを見通してでもいるように、静かに云うのであった。
「あなたは共犯者がこの女を殺したものと決めていられるようですが、僕にはどうも信じられませんね。しかし、それは兎も角として、眼帯の男を捉えなければならぬのは、云うまでもありません。僕は最初からこの事件に関係している責任上、あいつは必ず捉えてお目にかけます。そうすれば凡てが明かになるでしょう。魔術師の正体があばかれるでしょう」
 博士は明智の言葉に反撥(はんぱつ)を感じたのか、やや切口上になって云った。
「オオ、あなたは眼帯の男を捉えるとおっしゃるのですか。何か確信がおありなのですか」
 明智はなぜかびっくりしたような、烈しい口調で聞き返した。皮肉ではなく、真実驚いているらしい様子だ。宗像博士ともあろうものが、もう一人の共犯者を捉えて見せると云ったからとて、何をそれほど驚くことがあるのだろう。まるで「そんなことは不可能ですよ」と言わぬばかりの口吻であった。
 今夜の、明智の態度口吻(こうふん)には何となく(かい)し難い所があった。日頃の明智なれば、他人の手がけている犯罪事件に口出しをするさえ好まぬ筈だ。それに、今夜はノコノコ犯人逮捕の現場へ出かけて来たばかりか、同業者の宗像博士を揶揄するかのような態度を示しているのだ。明智らしくないやり方である。これには何か深い訳があるのではないだろうか。
「あの男を捉える確信があるかとおっしゃるのですか。ハハハ……、マア、見ていて下さい」
 博士は何を失敬なと云わぬばかりに、挑戦的な口調で、闇の中の明智の顔のあたりを、グッと睨みつけた。
 明智はたじろがなかった。彼も亦、博士の顔を異様に見つめている。長い間妙な睨み合いがつづいた。中村警部は、後日その折の有様を形容して、二人の目から青白い火花が散るかと怪しまれたと語った程である。
 そうしているところへ、鳥居の前に自動車の停車する物音が聞え、捜査課長を初め警視庁の人々が来着し、順序を踏んで、物慣れた現場調査が行われた。暫くすると、検事の一行も駈けつけて来た。そして一応の取調べが終ると、身柄引取人とてもない北園竜子の死体は、一先ず警視庁の死体置場へと運ばれたのであった。
 明智小五郎は、調査の終るのを待たないで、先に帰宅したのだが、その帰りがけに、中村警部を人目のない場所に招いて、こんなことを囁いた。
「僕はこの事件にすっかり惹きつけられてしまった。一つ僕は僕で、宗像君の邪魔をしないように、調査をして見ようかと思うのだよ」
「調べると云って、もう主犯が死んでしまって、あとは共犯の眼帯の男を探すばかりだが、君は何か心当りでもあるのかい」
 中村警部は、いぶかしげに聞き返す。
「イヤ、共犯者を探すことは、宗像君に任せて置けばいい。宗像君が、どんな風にしてあの眼帯の男を捉えるか、僕は非常に興味を感じている」
 明智は意味ありげに答えた。闇の中でニヤニヤ笑っているらしい様子だ。
「それじゃ、後には何も調べることがないじゃないか。犯人は川手氏一家への復讐の目的を完全に果してしまったのだから、これ以上事件の起りようはないし、その犯人の一人は自殺か他殺か、兎も角死んでしまった。残っているのは眼帯の男ただ一人だ。あの男を探さないで、君は何を調べようというんだい」
「君は忘れているよ。川手氏一家がみなごろしになったといっても、川手庄太郎氏だけは、山梨県の例の山の家で行方不明になったことが分っているばかりで、まだその死骸も現われないじゃないか」
「ウン、それはそうだ。しかし、今まで行方が分らないところを見ると、川手氏も無論殺されているに違いない。でなくて、犯人があの怪指紋の指を切ったりする筈がない。あの指を切って、隅田川へ捨てたのは、奴らの復讐事業が全く終ったことを意味すると考える外はないじゃないか」
「そうも考えられるがね。しかし、川手氏に限って、犯人が例の死体を見せびらかす手を用いなかったのはなぜだろう。一番怨みの深い筈の川手氏を、安らかに眠らせて置くというのは、この犯罪の動機から考えても変じゃないか。これには何か、死体陳列の出来ないような特別の事情があったとしか考えられない。僕はそこに一縷(いちる)の望みをつないでいるんだよ。
 いずれにしても確めて見なければならない。僕は明日N駅へ行って、あの一軒家を調べて見るつもりだ。そして、川手氏がどんな最期をとげたか、探り出して見るつもりだ。
 だが、それは宗像君には云わないでくれ給え、警視庁の人達にも内密にして置いて貰いたい。僕は全く陰の人として、僕自身の好奇心を満足させれば、それでいいのだからね。分ったかい。じゃ、いずれ調査の結果は、君だけに報告するからね」
 そう云い捨てて、明智は境内(けいだい)の闇を、鳥居の方へ立ち去って行くのであった。
 それから数日は何事もなく過ぎ去ったが、丁度北園竜子変死から七日目の夕方、日本橋のK大百貨店に、飛降り自殺の騒ぎが起った。
 百貨店閉館の間際に、その側面の道路を歩いていた人々は、空から大きな黄色いものが、爆弾のように落下して来て、目の前の鋪道に恐ろしい地響(じひびき)を立てて叩きつけられるのを見た。
 飛降り自殺者であった。
 一瞬間ギョッと立ちすくんだ人々が、やがて、それと知って駈けよって見ると、そこの敷石道の上に、カーキ色の労働服を着た男が、血にまみれて、押しつぶされたようになって息絶えていた。
 附近の交番から警官が駈けつけて、調べて見ると、覚悟の自殺らしく、死体の胸のポケットから、一通の書置き(よう)の紙切れが発見された。
 警官は何気なくその紙切れを読み始めたが、見る見る顔色が変った。その飛降り自殺者こそ、外ならぬ川手氏一家鏖殺(みなごろ)しの共犯人、例の眼帯の男であることが分ったからだ。
 遺書には、
「自分は生涯をかけての大復讐の目的を果して、ここに自決する。この自殺は必ずしも予定の行動ではないのだが、私立探偵宗像博士の為に、素性(すじょう)看破(みやぶ)られ、数日に(わた)る執拗な追跡に、最早(もはや)逃亡の気力も失せたので、博士に手柄を立てさせるよりは、自ら一命を絶つ決心をしたのだ。自分は復讐の為に、川手の娘達を群衆の前に(さら)し物にした。今こうして賑かな人通りにむくろを晒すのも、その罪(ほろ)ぼしの積りである。
 川手一家は自分の父母の仇敵である。父母は川手庄太郎の父の為に、自分が川手一家に加えたよりも、もっと残虐なやり方で殺害されたのだ。自分は父の今わの(きわ)の遺言に基いて、川手の子孫の根絶やしを思い立ち、生涯をその復讐事業の為に捧げたのである。
 北園竜子は本名を山本京子(きょうこ)といい、自分の肉親の妹だが、三重渦巻の異様な指紋を持っていたので、それを利用して川手一家のものを(おびや)かす手段とした。この目論見(もくろみ)は、意外の効果を収め、自分達は三重渦巻の賊とまで呼ばれるに至った。その妹京子も宗像博士の為に捉えられ、遂に隙を見て自殺してしまった。自分はもうこの世に何の思い残すところもない。一刻も早く冥途(めいど)に行って、可愛い京子に会い、二人の生涯をかけての大事業の完成を喜び合いたいばかりだ」
 という意味のことが、(つたな)い鉛筆文字で細々(こまごま)と認められ、その終りに「山本始」と署名がしてあった。これで明智小五郎の竜子他殺説は全く誤解であったことが判明した。流石の明智も、この事件では、いらざる差出口(さしでぐち)をして、却って新進宗像博士の引立て役を勤めたかの観があった。彼の推察が見当違いであったのに反して、博士の口約は見事に果された。眼帯の男山本始を殺してしまったのは残念だけれど、博士の手が犯人の直後に迫っていたことは、彼の遺書によっても明かであった。
 かくして、あれ程世間を騒がせた三重渦巻の怪殺人事件も、ここに全く終焉(しゅうえん)をつげたのである。被害者一家はみなごろしになってしまった。加害者は二人とも自殺をしてしまった。恨むもの、恨まれるもの、共に亡び去ったのだから、事件がこれ以上続きよう筈はなかった。さしもの大事件も、山本始の自殺を境として、もう過去の語草(かたりぐさ)となってしまったのだ。世人は勿論、警視庁自身さえ、そう考えていた。ただ一人、モジャモジャ頭の私立探偵明智小五郎を除いては、誰一人事件の終焉を信じないものはなかった。

    十几分钟以后,两人在那神社的牌坊前下了车,走进了一片漆黑的树林里。
 
    以前方隐隐约约的灯光为目标向祭殿后面走去,只见三个黑乎乎的人影手里都举着手电筒蹲在那里。一个是穿晨礼服的宗像博士,另两个是穿制服的警官。事后打听,原来那是根据博士的通知从附近派出所赶来的警官。
 
    “是宗像君吗?我是中村。我刚好在拜访小五郎,接到了侦查科的电话通知,就跟小五郎一起赶来了。从警视厅那儿过会儿也会来人的。”
 
    中村警部在黑暗中打招呼说。宗像博士一听小五郎也来了,立即上前一步说:
 
    “啊,小五郎君,您回来的消息我从报纸上知道了。在您外出期间,我被迫接受了这个骇人听闻的疑难案件,以为好容易追到了犯人,可您瞧,落得了这副样子。”
 
    博士一面用辩解似的口吻说道,一面将手电筒光移向祭殿的地板下。
 
    “啊!这是…”
 
    中村警部因过于吃惊不由得喊叫起来。
 
    这也奇怪。在祭殿的地板下,清晰地浮现在手电筒光束中的是一具血淋淋的尸体。
 
    黑色西服的胸敞开着,那白色的衬衣染得红红的,血块在手电筒光的照耀下刺目地闪着光。礼帽掉落了下来,长长的黑发乱蓬蓬的,从面如土色的女人嘴唇到下巴流着几条如红毛线一般的血。女人的右手里握着五寸左右的鞘短刀,刀尖上沾满了血浆。
 
    “是自杀呀。可为什么会落得这样……”
 
    宗像博士接过警部的话,过意不去似地解释说:
 
    “是我的疏忽。如果向你报告,请警察搜查那空房子就好了。可我决不是想抢先立功,我没有充分的把握,只是猜想猜想罢了,所以没有想麻烦警察。我想自己先弄清是否猜中了。谁知我完全猜中了,而且跟踪到这儿,轻而易举地逮住了这女人。可是,说什么也只是我一个人嘛,也不能带着这个女人去找汽车,所以我想还不如打电话告诉你,请你们来这儿的好。于是我把这女人绑在这儿地板下面的柱子上,跑到附近商店打了一个电话,还委托那商店的人请他们也告诉了派出所。离开这儿才五分钟时间,可回来一看,落得了这副样子。不知道是怎么解开的,她解开了绳结,刺中心脏自杀了。我压根儿没有想到她会藏有短刀。”
 
    死人的身上果然缠绕着好几道解开了的细绳,那一头缚在旁边的柱子上。那是宗像博士常不离身的丝线制的结实的细绳。
 
    “怎么能解开这绳子呢?决不会知道绑法吧。”
 
    小五郎蹲在柱子旁边,一面检查那细绳一面半自言自语地说道。
 
    “我也觉得奇怪,法绳的绑法我想我是懂的,可是……”
 
    博士也露着一副不胜诧异的表情。
 
    “宗像君,这女人也许不是自杀的。”
 
    小五郎好像突然察觉到了什么,说出了这奇怪的话。
 
    “啊?!你说不是自杀,那么是……”
 
    宗像博士和中村警部一听这意外的话都不由得俯身看着小五郎的脸,反问道。
 
    “我想可能是他杀,因为也可以想象有人剜了这女人的心脏,随后使死人的手握住这短刀,伪装做自杀,后来又解开了这绳子。”
 
    “可是,是谁又是为了什么干这种事呢?你是说对犯人怀恨的人藏在这树林子里学?”
 
    宗像博士露出一副木能理解的样子,像是责备小五郎的轻率判断似地说道。
 
    “不,未必是怀恨的人。宗像君,我刚才从中村君那儿详细地听到了案件的经过,这案件里除了那个像是男装的女人的小个子犯人以外,不是还有一个一只眼睛上戴着眼罩的大个儿吗?犯罪者为图自身安全而杀死同伙,这不是没有先例。我总觉得那个戴眼罩的大个儿还隐藏在这附近的黑暗里,正在听我们说话。感到那家伙就在我们身边。”
 
    小五郎靠近黑暗中的宗像博士身旁,一面促使他注意似地用手指尖轻轻敲着他那晨礼服的胳膊,一面压低嗓门说道。
 
    “为什么?即使同案犯来了这儿,也何必要杀这女人呢?不是只要解开绳子带走她就行了吗?”
 
    博士一副讥笑他的优秀竞争对手似的口吻。
 
    “可是,也许他有凭我们的常识难以判断的某种深刻的情况呀。宗像君,我冷静地考虑了一下这案件的整个经过,总有这种感觉。为什么带眼罩的男人不救同案犯,而要断送她的命呢?我感到这起案件的可怕的谜或许就在这里。”
 
    “是感觉吗?”
 
    宗像博士用更挖苦的口气问道,但小五郎毫不畏缩:
 
    “是的,我还不能明确说,但这起案件不是从一开始就超越了理论,充满着疯狂和魔术吗?犯人轻而易举地完成了所有不合理和不可能的事。谁能肯定杀死该救的同案犯不是他疯狂和魔术的一个表现呢?!戴眼罩的男人为什么要杀死北园龙子呢?这些谜真有意思啊2只要能解答这一难题,案件的全貌不就自然清楚了吗?”
 
    小五郎像是比他这番话还要洞察案件的奥秘似的慢慢地说道。
 
    “好像您已经认为是同案犯杀了这个女人,但我总不能相信。不过这暂且不管,我当然得逮住戴眼罩的男人。我一开始就参与解决这一案件,从我的责任来说,那家伙我一定要逮给您看。那样的话一切将会清楚吧,魔术师的真面目也将会被揭穿吧。”
 
    博士也许是对小五郎的话感到反感的缘故,用郑重其事的口吻说道。
 
    “噢,您是说想逮住戴眼罩的人?有什么把握吗?”
 
    不知为什么,小五郎用吃惊似的、激烈的口吻反问道。好像不是讽刺,而是真的有点惊奇,那口吻几乎是要说:“那种事是不可能的!”
 
    今晚的小五郎的态度和口吻中总觉得有一种令人难以理解的地方。倘是平素的小五郎,他是不喜欢干预别人正在办的犯罪案件的。然而,今晚不仅满不在乎地出门来到逮捕犯人的现场,而且露着一副嘲弄同行宗像博士的态度。这种做法不像是小五郎的。这里面会不会有什么深刻的原因呢?
 
    “您是说我没有把握逮住那男的,是吗?哈哈哈哈哈,那就请您看吧!”
 
    博士朝黑暗中的小五郎的脸瞪了一眼,用挑战般的口吻几乎要说:“什么?!没有礼貌的家伙!”
 
    小五郎没有退缩,他也异常地凝视着博士的脸。奇怪的对视持续了很长时间。中村警部事后形容当时的情景时说:不由得使人怀疑,从两人的眼睛里是不是进出了银白色的火星。
 
    正在这时,从牌坊前传来了汽车停车的声音,以侦查股长为首的警视厅的人到达现场,并依照顺序熟练地进行了现场勘查。不久检察厅的一行人也赶来了。大致调查了一遍以后,连领尸人都没有的北园龙子的尸首暂且被运到了警视厅的停尸房。
 
    小五郎没等调查结束就先回家了,临回去时他把中村警部叫到旁人看不到的地方,说了这样的话:
 
    “我完全被这案件吸引住了,我想我自己进行一下调查,以便不妨碍宗像君。”
 
    “你说调查,可主犯已经死了,剩下的只是寻找同案犯戴眼罩的男人,你是有什么线索吗?”
 
    中村警部诧异地反问道。
 
    “不,寻找同案犯的事委托给宗像君就行了,我对宗像君如何逮住那个戴眼罩的男人非常感兴趣。”
 
    小五郎像是有什么用意似地答道。好像在黑暗中独自笑着。
 
    “那么,其余不是没有什么可调查的了吗?犯人完全达到了对川手一家进行报复的目的,所以再也不会发生案件了,犯人北园龙子不管是他杀还是自杀,反正已经死了,剩下的只是一个戴眼罩的男人了。你不去寻找那男人,想调查什么呢?”
 
    “你忘了,虽然川手一家都被杀死了,可是川手庄太郎不是光知道他在山梨县的那幢山中的屋子里失踪,连他的尸体都还没有发现吗?”
 
 
 
 
    “哦,说的可也是。可是,从至今下落不明这点来看,川手也一定被害了。要不犯人是不会切掉那怪指纹的指头的。切掉那指头丢进隅田川里,只能考虑意味着那些家伙的复仇事业完全结束了。不是吗?”
 
    “也能那样考虑,可是,犯人只是对川手没有使用那个出示尸首的手法,这是为什么呢?让应该是怀恨最深的川手那样安眠,这即使从犯罪动机来考虑不也很奇怪吗?只能认为这里面有一种不能陈列尸首的特别情况。我对此抱有一线希望。不管怎样,必须确认一下。我打算明天就去N车站,调查一下那幢独所房子,并且想侦查出川手是怎样死的。但是你不要跟宗像君说,请你也对警视厅的人保密,因为我完全作为暗地里的人满足我自己的好奇心就行了。明白了吗?那么,调查结果我改日向你一个人汇报。”
 
    说罢,小五郎在院落里的黑暗中朝牌坊方向走去。
 
    打那以后平安无事地过去了几天,但刚好在北园龙子死后的第七天傍晚,在日本桥的M大百货商店发生了一起跳楼自杀的事件。
 
    在百货商店即将打烊的时候,在那一侧的马路上行走着的人们看到从空中像炸弹一样落下了一个很大的黄色的东西,随着一声可怕的震地的轰鸣声,重重地摔在眼前的铺着石子的马路上。
 
    是个跳楼自杀的人。
 
    霎时间惊呆的人们过了一会儿才明白过来,跑上去一看,只见铺着石子的马路上倒着一个身穿上黄色工作服的男人,他浑身是血,像是被压扁了似的断了气。
 
    警察从附近的派出所赶来调查了一下,好像是有精神准备的自杀,从尸首胸前的口袋里发现了遗书。
 
    警察漫不经心地读起了那份遗书,但眼看着脸色变了,因为他知道了这跳楼自杀的人不是别人,正是杀光川手一家的同案犯,那个戴眼罩的男人。
 
    遗书上用蹩脚的铅笔字密密麻麻地写着如下意思的话:
 
    我达到了花费我毕生精力的复仇目的,于此自尽。这自杀未必是预定的行动,我被私立侦探宗像博士识破了身世,由于他连日来死命追踪,我连逃亡的力气都没有了,所以与其让博士立功,不如下决。心自己了此一命。我为复仇将川手的女儿们示了众,现在这样曝尸于热闹的行人也是为了赎罪。
 
    川手一家是我父母的仇敌。父母是被川手庄太郎的父亲用比我施加给川手一家更惨绝人寰的方法杀害的。我根据父亲临终的遗言,决。心根绝川手的子孙,为这一复仇事业献出了一生。
 
    北园龙子本名叫山本京子,是我的胸妹,她有三重旋涡的异样的指纹,所以我利用它作为威胁川手一家人的手段。这一计划收到了出乎意料的效果,我们甚至被称为三重旋涡的强盗。妹妹京子也被宗像博士逮住,终于自杀了。我对这世界已经没有什么可留恋的了,只是想早点去冥府会见可爱的京子,共享完成两人毕生从事的大事业后的欢乐。
 
    遗书的最后署着“山本姑”的名字。这就弄清了小五郎关于龙子他杀的见解完全是误解,连小五郎也像是在这案件中多嘴多舌,反而作了新露头角的宗像博士的陪衬。他推测失误了,而博士的口头约定出色地实现了。戴眼罩的男人山本始自杀身死是件憾事,但从他的遗书来看显然博士的手已经逼到了他的身后。
 
    这样,那般轰动社会的三重旋涡奇怪凶杀案也于此完全宣告结束了。被害者一家都被杀光,加害人双双自杀了。恨的人和被浪的人都已灭绝,所以案件不会再继续下去了。那样的大案件也以山本站的自杀为分界线已经成为过去的话题了。不用说是世人,连警视厅本身也这样考虑。除了头发蓬乱的私立侦探小五郎以外,没有一个人不相信案件已经结束。

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