「よく考えてごらん。インド人たちはコックをしばったけれど、主人の春木さんにたいしてはなんの用意もしなかったじゃないか。春木さんは外出していて、いつ帰るかわからないのだよ。そして、帰ってくればコックの報告を聞いて、地下室のきみたちを、助けだすかもしれないのだよ。もし助けだされたら、せっかくの苦心が水のあわじゃないか。それをまるで気にもしないで、緑ちゃんの最期も見とどけないで、逃げだしてしまうなんて、あの執念ぶかさとくらべて考えてみると、おかしいほど大きな手落ちじゃないか。現に、こうして、きみも緑ちゃんも助かっているんだからね。インド人たちはなんのために、あれだけの苦労をしたのか、まるでわけがわからなくなるじゃないか。
小林君、わかるかね、この意味が。犯人はね、緑ちゃんを殺す気なんて、少しもありゃしなかったのだよ。ハハハ……、おもしろいじゃないか。みんなお芝居だったのだよ。」
探偵はまた、さもゆかいらしく笑いだしましたが、小林君には、その意味が少しもわからないのです。いったいぜんたい先生は何を考えていらっしゃるのだろう。それを思うと、なんだかこわくなるようでした。
「さあ、小林君、この四つの疑問をといてごらん。これを四つともまちがいなくといてしまえば、こんどの事件の秘密がわかるのだよ。ぼくもそれを完全にといたわけじゃない。これからたしかめてみなければならないことが、いろいろあるんだよ。しかし、ぼくには今、この事件の裏にかくれて、クスクス笑っているお化けの正体が、ぼんやり見えているんだよ。
ぼくは、こんなに、ニコニコしているけれど、ほんとうはそのお化けの正体に、ギョッとしているんだ。もし、ぼくの想像があたっていたらと思うと、あぶら汗がにじみだすほどこわいのだよ。」
明智探偵は、ひじょうにまじめな顔になって、声さえ低くして、さもおそろしそうにいうのでした。
その顔を見ますと、小林君はゾーッと背すじが寒くなってきました。なんだかそのお化けが、うしろからバアーといって、とびだしてくるような気さえするのです。
「ところでね、小林君、もう一つ思いだしてもらいたいことがあるんだが、きみはさっき、春木さんの顔をよく見たといったね。そのとき、もしやきみは……。」
探偵はそこまでいうと、いきなり小林君の耳に口をよせて、なにごとかヒソヒソとささやきました。
「エッ、なんですって?」
それを聞くと、小林少年の顔がまっさおになってしまいました。
「まさか、まさか、そんなことが……」
小林君はほんとうにお化けでも見たように、そのお化けがおそいかかってくるのをふせぎでもするように、両手を前にひろげて、あとじさりをしました。
「いや、そんなにこわがらなくってもいい。これは、ぼくの気のせいかもしれないのだよ。ただね、今あげた四つの疑問をよく考えてみるとね、みんなその一点を指さしているように思えるのだよ。だが、たしかめてみるまでは、なんともいえない。ぼくはきょうのうちに、一度、春木さんと会ってみるつもりだよ。春木さんの電話は何番だったかしら。」
それから、明智探偵は電話帳をしらべて、春木氏に電話をかけるのでした。
読者諸君、名探偵が小林君の耳にささやいたことばは、いったい、どんなことがらだったのでしょう。それを聞いた小林君は、なぜ、あれほどの恐怖をしめしたのでしょう。
明智探偵は、四つの疑問をといていけば、しぜんそのおそろしい結論に達するのだといいました。諸君は、こころみにそのなぞをといてごらんなさるのも一興でしょう。しかし、こんどのなぞは、ずいぶん複雑ですし、その答えがあまりに意外なので、そんなにやすやすとはとけないだろうと思います。つぎの章はそのなぞのとけていく場面です。そして、ゾッとするようなお化けが、正体をあらわす場面です。
小林君、わかるかね、この意味が。犯人はね、緑ちゃんを殺す気なんて、少しもありゃしなかったのだよ。ハハハ……、おもしろいじゃないか。みんなお芝居だったのだよ。」
探偵はまた、さもゆかいらしく笑いだしましたが、小林君には、その意味が少しもわからないのです。いったいぜんたい先生は何を考えていらっしゃるのだろう。それを思うと、なんだかこわくなるようでした。
「さあ、小林君、この四つの疑問をといてごらん。これを四つともまちがいなくといてしまえば、こんどの事件の秘密がわかるのだよ。ぼくもそれを完全にといたわけじゃない。これからたしかめてみなければならないことが、いろいろあるんだよ。しかし、ぼくには今、この事件の裏にかくれて、クスクス笑っているお化けの正体が、ぼんやり見えているんだよ。
ぼくは、こんなに、ニコニコしているけれど、ほんとうはそのお化けの正体に、ギョッとしているんだ。もし、ぼくの想像があたっていたらと思うと、あぶら汗がにじみだすほどこわいのだよ。」
明智探偵は、ひじょうにまじめな顔になって、声さえ低くして、さもおそろしそうにいうのでした。
その顔を見ますと、小林君はゾーッと背すじが寒くなってきました。なんだかそのお化けが、うしろからバアーといって、とびだしてくるような気さえするのです。
「ところでね、小林君、もう一つ思いだしてもらいたいことがあるんだが、きみはさっき、春木さんの顔をよく見たといったね。そのとき、もしやきみは……。」
探偵はそこまでいうと、いきなり小林君の耳に口をよせて、なにごとかヒソヒソとささやきました。
「エッ、なんですって?」
それを聞くと、小林少年の顔がまっさおになってしまいました。
「まさか、まさか、そんなことが……」
小林君はほんとうにお化けでも見たように、そのお化けがおそいかかってくるのをふせぎでもするように、両手を前にひろげて、あとじさりをしました。
「いや、そんなにこわがらなくってもいい。これは、ぼくの気のせいかもしれないのだよ。ただね、今あげた四つの疑問をよく考えてみるとね、みんなその一点を指さしているように思えるのだよ。だが、たしかめてみるまでは、なんともいえない。ぼくはきょうのうちに、一度、春木さんと会ってみるつもりだよ。春木さんの電話は何番だったかしら。」
それから、明智探偵は電話帳をしらべて、春木氏に電話をかけるのでした。
読者諸君、名探偵が小林君の耳にささやいたことばは、いったい、どんなことがらだったのでしょう。それを聞いた小林君は、なぜ、あれほどの恐怖をしめしたのでしょう。
明智探偵は、四つの疑問をといていけば、しぜんそのおそろしい結論に達するのだといいました。諸君は、こころみにそのなぞをといてごらんなさるのも一興でしょう。しかし、こんどのなぞは、ずいぶん複雑ですし、その答えがあまりに意外なので、そんなにやすやすとはとけないだろうと思います。つぎの章はそのなぞのとけていく場面です。そして、ゾッとするようなお化けが、正体をあらわす場面です。