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少年侦探团-屋顶的怪人(1)
日期:2021-09-17 23:58  点击:310

屋上の怪人


 明智探偵は何も知らずに話しつづけました。
「あべこべといいますのはね、この事件の犯人は、彼が見せかけようとしたり、広告したりしたのとは、まるで反対なものではないかということです。
 つまり、犯人は黒いインド人ではなくて、その反対の白い日本人であった。篠崎さんのお嬢ちゃんをさらったのも、いかにも宝石につきまとうのろいのように見せかける手段で、けっして命をとろうなどという考えはなかったということです。
 それがしょうこに、緑ちゃんも小林君も、ちゃんと助かっているじゃありませんか。もしほんとうに殺すつもりだったら、あれほど苦心してさらっておきながら、最期も見とどけないで、たちさってしまうわけがないのです。
 すべては世間の目を、べつの方面にそらすための手段にすぎなかったのですよ。それほどまでの苦労をしなければならなかったのをみると、この犯人は、よほど世間に知れわたっているやつにちがいありません。ね、そうじゃありませんか。」
「では、あなたは、犯人はインド人じゃないとおっしゃるのですか。」
 春木氏が、みょうにしわがれた声でたずねました。
「そうです。犯人は日本人にちがいないと思うのです。」
 探偵は微笑をうかべながら、じっと春木氏を見つめました。
「でも、たしかにインド人がいたじゃありませんか。わたしが部屋を貸したことは、かりに信用していただけないとしても、ここの二階にいたのを子どもたちが見たということですし、聞けば、小林君とお嬢ちゃんとが乗った車の運転手と助手が、いつのまにか黒ん坊にかわっていて、ふたりはそれをたしかに見たといっていましたが。」
「ハハハ……。春木さん、それがみんなうそだったとしたら、どうでしょう。
 小林君のいうところによりますと、最初あの自動車に乗ったとき、助手席にいたのは、たしかに篠崎さんの秘書の今井君だったそうです。それがどうして、とつぜん黒ん坊にかわったのでしょう。
 いや、そればかりではありません。ちょうどそのころ、ほんものの今井君は、養源寺の境内に、手足をしばられてころがっていたのですよ。
 ひとりの今井君が、同時に二ヵ所にあらわれるなんて、まったく不可能なことじゃありませんか。春木さん、この点をぼくは、じつにおもしろく思うのです。こんどの事件のなぞをとく、いちばんたいせつなかぎが、ここにあると思うのですよ。」
 それを聞くと、春木氏はニヤニヤとみょうな微笑をうかべて、さも感心したようにいうのでした。
「ああ、さすがは名探偵だ。あなたはそこまでお考えになっていたのですか。そして、そのふしぎはとけましたか。」
「ええ、とけましたよ。」
「ほんとうですか。」
「ほんとうですとも。」
 そして、ふたりはしばらくのあいだ、だまりこんだまま、ひじょうに真剣な表情になって、にらみあっていました。まるで、おたがいの心の底を見すかそうとでもしているようです。
「説明してください。」
 春木氏は青ざめた顔に、いっぱい汗の玉をうかべて、ためいきをつくようにいいました。
「自動車の中で、ふたりのものが、とつぜん黒ん坊にかわったのは、子どもだましのようなかんたんな方法です。ほかでもありません。車が走っているあいだに、うしろの客席から見えないように、ソッとうつむいて、用意の絵の具――たぶん、すすのようなものでしょう――それで顔と手を、まっ黒に染めたのです。
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