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少年侦探团-屋顶的怪人(4)
日期:2021-09-17 23:58  点击:318
「ちくしょうめ! やりゃあがったな。」
 二十面相は、ふいをうたれて、よろよろとよろめきながら、さもくやしそうにわめきました。そして、いきなり、いっぽうの窓のほうへかけよります。
「おい、窓からとびおりるなんて、つまらない考えはよしたほうがいいぜ。念のためにいっておくがね、この家のまわりは、五十人の警官がとりかこんでいるんだよ。」
 明智探偵が二の矢をはなちました。
「ウー、そうか。よく手がまわったなあ。」
 二十面相は窓をひらいて、暗やみの地上を見おろすようなしぐさをしましたが、またクルッとこちらを向いて、
「ところがねえ、たった一つ、きみたちの手のとどかない場所があるんだよ。これがおれの最後の切り札さ。どこだと思うね。それはね、こうさ!」
 いいはなったかと思うと、二十面相の上半身が、グーッと窓の外へ乗りだし、そのままサッとやみの空間へ消えさってしまいました。
 それはまるで機械じかけの人形が、カタンとひっくりかえるような、目にもとまらぬ早わざでした。
 二十面相は、いったい何をしたのでしょう。窓の外へとびおりて、逃げさるつもりだったのでしょうか。しかし、明智探偵はうそをいったのではありません。この洋館のまわりは、ほんとうに数十人の警官隊がとりまいているのです。そのかこみを切りぬけて、逃げだすことなど思いもおよびません。
 明智探偵は、二十面相の姿が窓の外に消えたのを見ると、急いでそこにかけより、地上を見おろしましたが、これはふしぎ、地上にはまったく人の姿がありません。
 やみ夜とはいえ、階下の部屋の窓明かりで、庭がおぼろげに見えているのですが、その庭に、今とびおりたばかりの二十面相の姿がないのです。
「おい、ここだ、ここだ。きみはあべこべの理屈(りくつ)をわすれたのかい。おれはとびおりたのでなくて、昇天しているんだぜ。悪魔の昇天(しょうてん)さ。ハハハ……。」
 空中からひびく二十面相の声に、ひょいと上を見た探偵は、あまりの意外さに、思わず「アッ。」と声をたててしまいました。
 ごらんなさい。二十面相はまるで軽業師のように、大屋根からさがった一本の綱をつかんで、スルスルと屋上へとのぼっていくではありませんか。ほんとうに悪魔の昇天です。
 探偵には見えませんでしたけれど、大屋根の上には、白い上着を着た例のコックが、足をふんばって、屋根の頂上にむすびつけた綱を、グングンと引きあげています。下からはたぐりのぼる力、上からは引きあげる力、その両ほうの力がくわわって、二十面相はみるみる大屋根にのぼりつき、かわらの上にはいあがってしまいました。
 さいぜん、窓からコックの顔がのぞいたのは、綱の用意ができましたよというあいずだったのです。彼はたぶん綱のはしにからだをくくりつけて、さかさまに窓の外へぶらさがったのでしょう。
 こうして、怪盗の姿は、またたくまに、明智探偵の目の中から消えてしまいましたが、しかし、屋根の上などへ逃げあがって、いったいどうしようというのでしょう。さびしい一軒屋のことですから、まわりは四ほうともあき地で、町中のように屋根から屋根を伝わって逃げる手段もありません。
 それに、洋館ぜんたいが、おびただしい警官隊のために、とりまかれているのです。まったく袋のネズミも同然ではありませんか。屋根の上には飲み水や食料があるわけでもないでしょうから、いつまでもそんな場所にいることはできません。雨でも降れば、ふたりはあわれな、ぬれネズミです。
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