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少年侦探团-气球的下场(2)
日期:2021-09-17 23:58  点击:317
 四台のヘリコプターは、四ほうから賊の軽気球をつつむようにして、とんでいます。しかし、プロペラのない軽気球には、このかこみをやぶってのがれる力がありません。風のまにまに吹きながされているばかりです。
 二十面相は、今や自由をうばわれたも同然です。とはいえ、ヘリコプターのほうでこれをきゅうにとらえる方法もありません。ただ、風船と同じ速度で飛行しながら、こんきよく追跡をつづけるほかはないのです。
 このふしぎな空中ページェントの通過する町や村の人たちは、仕事も何もうちすてて、先をあらそって家の外にとびだし、空を見あげて口々に何かさけぶのでした。畑の農民もすきくわを投げだして空を見まもっています。小学校のガラス窓からは、男の子や女の子の顔が、鈴なりになっています。ちょうどその下を通りすぎる汽車の窓にも、空を見あげる人の顔ばかりです。
 四台のヘリコプターは、ひし形の位置をとって、綱をはったように、黒い軽気球をまんなかにはさみながら、どこまでもどこまでもとんでいきます。
 ときには一台のヘリコプターが、賊をおどかすように、スーッと軽気球の前をかすめたりします。二十面相は、どんな気持でいるのでしょう。この空の重囲(じゅうい)におちいっても、まだ逃げおおせるつもりなのでしょうか。
 やがて、高崎市の近くにさしかかったとき、とうとう二十面相の運のつきがきました。黒い軽気球はとつぜん浮力をうしなったように、みるみる下降をはじめたのです。
 気球のどこかがやぶれて、ガスがもれているようすです。おお、ごらんなさい。今まではりきっていた黒い気球に、少しずつしわがふえていくではありませんか。
 おそろしい光景でした。一分、二分、三分、しわは刻一刻とふえていき、気球はゴムまりをおしつぶしたような形にかわってしまいました。
 風が強いものですから、下降しながらも、高崎市の方角へ吹きつけられていきます。四台のヘリコプターは、それにつれて、かじを下に向けながら、ひし形の陣形をみだしませんでした。
 高崎市の丘の上には、コンクリート造りの巨大な観音像が、雲をつくばかりにそびえています。その前の広場にも、奇怪な空のページェントを見物するために、多くの人がむらがっていたのですが、その人々は、どんな冒険映画にも例のないような、胸のドキドキする光景を見ることができました。
 晴れわたった青空を、急降下してくる四台のヘリコプター、その先頭には、しわくちゃになったまっ黒な怪物が、もうまったく浮力をうしなって、ひじょうな速力で地上へとついらくしてくるのです。
 傷ついた軽気球は、大観音像の頭の上にせまりました。サーッと吹きすぎる風に、しわくちゃの気球が、いまにも観音さまのお顔に巻きつきそうに見えました。
「ワーッ、ワーッ。」というさけび声が、地上の群衆の中からわきおこります。
 気球は観音さまのお顔をなで、胸をこすって、黒い怪鳥のように、地面へと舞いくだってきました。そして、また、「ワーッ。」とさけびながらあとじさりする群衆の前に、横なぐりに吹きつけられて、とうとう黒いむくろをさらしたのでした。
 軽気球のかごは、横だおしになって地面に落ち、風に吹かれるやぶれ気球のために、ズルズルと五十メートルほども引きずられて、やっと止まりました。中のふたりはかごといっしょにたおれたまま、気をうしなったのか、いつまでたっても起きあがるようすさえ見えません。
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