ジャングルのとりもの
八ぴきのサルは、つぎつぎと毛皮をぬいで、正体をあらわしました。白シャツに下着だけの少年たちや、ボロボロのセーターをきたチンピラどもです。奥のほうから、サルにならなかった、ふたりの学生服の少年も出てきました。
小林少年も毛皮をぬいで、シャツ一まいの姿をあらわしました。そして、マユミさんの手をとって、にこにこしながら、西洋悪魔の顔をながめるのでした。
西洋悪魔は、にくにくしげに少年たちの顔を見まわしていましたが、とつぜん、おかしくてたまらないというように笑いだしました。
「ワハハハハハ……。小林君、なかなかあじなことをやるね。ワハハハハ……、だが、おれが、きみたちみたいなこどもに負けると思っているのかね。おれは、魔法つかいだぜ。このうちには、きみたちの思いもつかない恐ろしいしかけがある。いまに、泣きべそをかかないように、用心するがいいぜ。ワハハハハハ……。」
西洋悪魔は、笑いながら、五―六歩右へよったかとおもうと、地面のある場所を、足でグッとふみつけました。すると、みんなの目の前が、パッとまっかになって、バン、バン、バン、バンと、恐ろしい音がとどろきました。
赤い火の棒が、てんじょうに吹きあがって、それが、美しい金色の粉になって、地面に落ちてくるのです。
花火です。どこかのボタンを足でふむと、花火があがるようなしかけがしてあったのです。
みんなが、金色の花火に見とれていますと、その花火の音があいずだったのでしょう。ジャングルの木のみきのむこうから、ひとり、ふたり、三人、四人、五人、まっ黒なシャツとズボンの、西洋悪魔と同じような姿の男が、魔物のようにあらわれてきました。
「ワハハハハ……。おれのほんとうのけらいがやってきたぞ。さあおまえたち、このチンピラどもをかたっぱしからひっくくってしまえ。あのむすめも、逃がすんじゃないぞ。」
西洋悪魔が、勝ちほこったようにどなりました。
こちらはこどもが十人、あいては西洋悪魔をいれて六人です。とてもかないません。逃げようにも、黒シャツの男たちは四方からあらわれたので、逃げるにすきがありません。
男たちは、にやにや笑いながら、両手をひろげて近づいてきます。ひとりの少年が、たちまちつかまって、「ワーッ。」と、悲鳴をあげました。
そのとき、へんなことが起こりました。ジャングルの木のみきのうしろから、またしても黒いかげが、ボーッとあらわれてきたのです。
おやっ! こんどは、ぼうしをかぶって、制服をきています。おまわりさんの制服です。ひとり、ふたり、三人……七人です。それが、つぎつぎとあらわれて、黒シャツの男たちのうしろへ近づいてくるではありませんか。
「あっ! 中村さん。」
小林少年が思わず叫びました。それは警視庁の中村警部だったのです。ほかの六人は、その部下の警官たちです。
「おお、小林君、この子どもの案内でやってきたよ。」
中村警部はそういって、うしろにいた小さい少年を、前におし出しました。
「あっ、ポケット小僧!」
「小林さん、よかったねえ、もうだいじょうぶだよ。明智先生も、いまにここへくるよ。」
ポケット小僧が、おどるようなかっこうをして叫ぶのでした。
警官たちは、いきなり黒シャツの男たちにとびかかっていき、あちこちで、恐ろしいとっ組みあいがはじまりました。
西洋悪魔は、身をかわしながら逃げまわっていましたが、またしても、大声で笑いだしたではありませんか。
「ワハハハハハ……。なに、明智がきたって? そいつはゆかいだ。この家に、どんなしかけがあるかも知らないで……。」
ひとりの警官が、西洋悪魔にとびついていきました。
「おっとどっこい、きさまたちの手にあうおれじゃない。いまに、ほえづらかくなよ。」
パッととびのいて、木のかげに走りこんだかと思うと、カチッと音がして、とつぜん、ジャングルの中がまっ暗になってしまいました。電灯のスイッチをきったのです。
しかし警官たちは、こういうときの用意に、みんな懐中電灯を持っていました。あちらでもこちらでも、パッ、パッと懐中電灯が光り、その光線が空間をとびまわるのでした。