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青铜魔人-橡胶人
日期:2021-10-31 19:11  点击:314

ゴム人形


「中村君、青銅の魔人の正体はこれだよ。」
 明智がニコニコしながらいいました。
 中村警部たちは、あまりのことに、夢でも見ているのではないかと、きゅうには返事もできません。
「ハハハヽヽヽヽ、おどろいたかい。ごらんのとおり、こいつは厚いゴムでできた、ゴム人形なんだよ。両足のうらに大きな穴があって、それがとめ金でおさえてある。ぼくは今、そのとめ金をはずしたんだよ。パチンと音がしたのが、それだ。足のうらの二つの大穴からいっぺんに空気がぬけるので、たちまちペチャンコになってしまったのさ。」
 アア、なんという、とほうもないことでしょう。あのおそろしい青銅の魔人が、ゴム風船のような人形だったなんて、まるで信じられないことです。たましいのないゴム人形が、物を盗んだり、かけだしたり、できるわけがありません。中村警部はあっけにとられて目をパチクリするばかりでした。
「こいつを、もとの魔人にするのも、わけはないのだよ。ちょっとやって見るからね。」
 明智はそういって、幕のうしろへはいって行きましたが、すぐに一本のガス管のような長いくだのさきを持って、出て来ました。
「このくだは、かべのうしろのエアコンプレッサーにつづいているんだよ。ボタンをおすと、その機械がうごいて、おそろしいいきおいで、このくだから空気がふきだすのだ。自動車のタイヤに空気を入れる、あのエアコンプレッサーと同じしかけなのさ。」
 明智はペチャンコになったゴムのかたまりを、あちこちとさがして、空気を入れる小さな穴を見つけだすと、そこへくだのさきのネジを、はめこみました。すると、シューッと音がして、ぞうきんのかたまりみたいに見えていたゴム人形が、ムクムクと動き、すこしずつ、すこしずつふくれてきたではありませんか。
「足のうらのとめ金をはめて、しばらくこうしていれば、もとの青銅の魔人になるんだが、そこまでやらなくてもいいだろう。ただ、ゴム人形のしかけさえ、わかればいいのだからね。」
 とめ金をはめなくても、空気のいきおいが強いものですから、見るみるふくれあがって、青黒い大きな海亀(うみがめ)がはっているような形になりました。首のほうにも空気がはいって、あのぶきみな魔人の顔が、半分ぐらいの大きさで、しわだらけで、ビクンビクンと動いています。
「アア、わかった。かえだまだね。そいつはほんとうの魔人ではなくて、魔人のかえだまなんだね。」
 中村警部はやっとそこへ気がつきました。
「そうだよ。ゴム人形は自分で動けないからね。魔人のるすのあいだ、この幕のうしろに立っていて、代理をつとめるというわけさ。それには人間の助手がいなくちゃどうにもならない。幕をちょっとひらいて、魔人の姿を見せるのにも、例の歯車の音をさせるのにも、人手がいり用だ。それにはね、魔人のけらいで、道化師のふうをした、へんなやつがここにいるんだよ。」
 明智はそこで、ふとことばをきって、ツカツカと中村警部のそばによると、耳に口をつけて、なにかボソボソとささやきました。すると、中村警部は入口に立ちはだかっていた刑事を、手まねきして、なにかまたささやきます。
 明智はつぎに手塚さんのほうへ近づこうとして、びっくりしたように、立ちどまりました。
「オヤ、手塚さん、顔色がよくないですね。気分がわるいのですか。」
 手塚さんは、魔人にしばられた手足の縄を、警部たちにといてもらっていましたが、ひどくつかれているようすで、もとの場所にグッタリと、うずくまったまま、青ざめた顔をしていました。
「イヤ、なんでもありません。だいじょうぶです。」
 歯をくいしばるようにして、ひくい声でこたえるのです。
「中村君、手塚さんのそばについていてあげてくれたまえ。ひどく気分がわるいようだったら、ひとまずここを出てもいいのだが……。」
 中村警部と刑事とは、手塚さんの両がわに、すりよって、手塚さんを、だきかかえんばかりにして、気をくばっています。
「イヤ、それほどでもありません。それよりも、昌一と雪子のことが心配です。ふたりはどうしたのでしょう。どこにいるのでしょう。」
 手塚さんは、ふたりの愛児をほうっておいて、魔人のすみかを立ちさる気には、なれないようすです。
 アア、昌一君、雪子ちゃん、それから、われらの小林少年、あの三人は、いったいどうしたのでしょう。古井戸の底で水ぜめになり、今にもおぼれようとしていたのですが、うまく助かることができたのでしょうか。
「ご安心なさい。昌一君も雪子ちゃんもぶじです。今にあわせてあげますよ。」
 明智は手塚さんを、やさしくなぐさめました。やっぱり三人は助けられていたのです。それにしても、だれが、どうして助けたのでしょう。


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