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青铜魔人-揭穿骗局
日期:2021-10-31 19:14  点击:282

あばかれたトリック


 明智探偵の話はつづきます。
「しばらくして、それに気づいたぼくは、おどろいて現場へとんで行って、スイッチをおして、モーターを動かし、水をすいあげさせて、三人を助けた。この寒いのに、頭から水びたしになっていたので、魔人のよろいをぬがせて、からだをふきとり、三人をすいじ場の電気ストーブのところへつれて行って、あたためてやったものだ。ぼくは魔人のよろいをぬがせる鍵も、その時はもう、ちゃんと手に入れていたのだよ。
 そして、三人の子供にまたもとの魔人のよろいを着せておいたんだが、中村君、なぜだかわかるかね。なにも、あんなよろいなんか着せなくても、三人がここへつれられて来た時の服は、ちゃんととってあるんだから、それを着せればいいわけだがね。ぼくはわざとよろいのほうを着せた。そのわけは今にわかるよ。」
 明智はそこで、意味ありげにニヤリと笑いました。なにかしら、明智のほかにはだれも知らない秘密があるのでしょう。
「その二日のあいだに、ぼくは魔人のトリックをすっかり見やぶってしまった。ぼくたちは今まで、青銅の魔人というのは、一つのきまった形をしていると思いこんでいた。ここに大きなまちがいがあったのだよ。どこへあらわれる魔人も、みな同じ姿をしていたが、そのじつは、三種類の魔人があって、ばあいによって、そのうちのどれか一つが姿をあらわしていたのだ。そこに、あいつのじつに悪がしこいトリックがあったのだ。
 第一種の魔人は、今ぼくが着ているこのよろいの姿だ。中に人間がはいっているのだから、自由に動ける。よつんばいになって、かけだすことだってできる。よつんばいになったからといって早く走れるわけではないのだが、魔人のやつは、あんな走りかたをして、さも機械じかけのように見せかけたのだよ。
 第二種の魔人は、このあいだ煙突の上からホースの水でおとされたやつだ。こいつは腹の中まで機械ばかりでできていて、ピストルでうたれてもへいきなんだよ。だから、相手が近づけないような場所には、こいつをあらわして、わざとピストルにうたれ、ビクともしないところを見せつけるというわけだ。
 この魔人はにせものだから、自分では歩けない。ほんものの魔人が夜にまぎれて、ある場所へ持って来たり、また持ちさったりするのだ。このあいだの煙突の時なども、煙突のてっぺんにあがるまでは、ほんものの魔人で、それからあとは、にせものと、とりかえたのだな。
 どうしてとりかえたかというのかい。それはね、あの時は、逃げるさきは煙突のてっぺんと、ちゃんときまっていたのだ。そこで、前もって、あの腹の中が歯車ばかりでできている、かえだまを煙突のてっぺんの内がわにつるしておいて、ほんものの魔人は、そのかえだまを煙突の上に腰かけさせ、自分は、これも前もって、煙突の内がわにかけておいた長い縄ばしごをつたって、下までおり、そこで魔人のよろいを手ばやくぬいで、ふつうの人間の姿になり、あのさわぎにまぎれて、逃げさったのだ。むろん、よろいと縄ばしごは、ふろしきにつつんで持って行った。現場に証拠をのこすようなヘマはしない。
 つぎに第三種の魔人は、さっき空気をぬいて見せたゴム人形だよ。こいつが煙のように消えうせる役目をつとめていたのだ。手塚さんのうちの湯殿と、納戸と、蔵の中と、それから、ゆうべは、手塚さんの寝室にあらわれた、あの魔人はみんなゴム人形だったのさ。
 手塚さんのうちのどこかに、エアコンプレッサーがかくしてある。そこからくだをひっぱって、ゴム人形に空気を入れて、うす暗いところに立たせておく。だれかがそれを見つけて逃げだしたすきに、人形の両足のとめ金をはずして、いっぺんに空気をぬいてしまう。両足の底が全部ひらくようになっているんだから、アッと思うまにペチャンコになってしまう。一度逃げだした人が、みんなといっしょに、ひきかえして来た時には、もう人形は影も形もなくなっている。というわけなんだな。
 ギリギリというあの音をだす機械は置時計ぐらいの大きさだから、どこにでもかくせる。そのネジをまいておけば、あのいやな音がするのだよ。
 そうしてペチャンコになったゴム人形は、小さくたたんで、どこかへかくしてしまうのだが、湯殿のときには一時(おけ)の中につめて、ふせておいたのかもしれない。納戸のときは、たぶん、たんすのひきだしの中へ入れたのだろう。蔵の中では、電球がわれて、まっくらになったすきに、着物のはいっている大きな箱の底へかくしたのだ。
 あの時は、みんなで蔵の中を念入りにしらべたけれども、銅像みたいな大きなやつをさがしたのだから、それが着物のように小さくたたまれて、箱の底にかくされているなんて、思いもよらないことだった。それから、ゆうべの、手塚さんの寝室では、あすこにある洋だんすのひきだしの中か、あるいはベッドのシーツの下か……。」
「明智君、ちょっと。それじゃあ、あれはどう説明すればいいんだい? 魔人のやつは町を走っていて、ふいに消えてしまうことが、たびたびあったが、ゴム人形は走れないじゃないか。」
 中村警部が明智のことばの切れるのをまちかねて、たずねます。
「ウン、それにはまた、別のトリックがあるんだ。魔人のやつはね、私設マンホールをほうぼうにこしらえていたんだ。エ、わかるかい。なかなか味な思いつきだよ。下水のマンホールね、あれはどこの町にもあるが、だれでもその上を歩いていて、さてマンホールがどこにあるかと聞かれても、ちょっと思いだせないものだ。毎日かよっている学校の階段の段のかずがいくつあるか、だれも知らないのと同じわけだよ。
 つまり、人間の注意力のすきまだね。このすきまにつけこんで、魔人のやつは、何か仕事をしてから、逃げだそうと思う方角へ、夜中に、たこつぼのような(あな)をほり、その上にマンホールのふたをかぶせて、ちゃんと用意しておくのだ。銀座の白宝堂から時計を盗みだしたときも、ガードのそばで消えてしまったが、あの人通りのすくない場所に、にせのマンホールがつくってあったのだよ。魔人のやつは、その中へとびこんで、中から鉄のふたをしめて、じっと息を殺していたのだ。
 小林にきいてみるとね、例の煙突さわぎの時、小林はうしろから大きなふろしきのようなものをかぶせられ、アッと思うまに、地の下へおちこんで行くような気がしたといっているが、これもあの現場ににせのマンホールがつくってあったのだ。小林は一時その中へほうりこまれたのだよ。」
「フーム。そんな手だったか。」
 中村警部は腕をくんで、考えこんでしまいました。そんな子供だましのトリックに、ごまかされていたのかと思うと、残念でしかたがありません。
「それにしても、青銅のよろいや、ゴム人形などを、いく組もつくるのは、これも、よういなことじゃないが……。」
 警部が、ふしんをうつと、明智は、こともなげに答えます。
「やつは、秘密の小工場を持っているんだ。その場所もわかっているから、いずれ、おさえてしまうつもりだがね。そこで、二年もかかって、製造したものだよ。」


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