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怪奇四十面相-骷髅的秘密
日期:2021-11-15 23:58  点击:421

どくろの秘密


 しばらくすると、骸骨すがたの博士が、ヒョイと、うしろをふりむきました。小林君の息が、博士の耳のうしろを、くすぐったからです。
 骸骨のふたつの大きな目と、百科事典の化けものの少年の目とが、火ばなをちらすように、にらみあいました。
「きみはだれだ。どこから、はいってきた。」
 金色の骸骨の口が、パクパクうごいて、ぶきみな、ひくい声がもれてきました。
「ぼくは四十面相を追っかけているのです。明智探偵の助手の小林っていうのです。」
「フーン、そうか。明智探偵の名はよく知っている。小林という、すばしっこい少年助手がいることも、話にきいている。しかし、その小林君が、どうして、わしのうちへ、はいってきたのかね。ここには四十面相なんて、いやしないじゃないか。」
「いたのですよ。いましがた、ここを出ていったばかりです。」
「ばかなことを言いなさい。ここには、わしのほかに、ふたりの骸骨がいたばかりだ。ふたりとも、わしの親戚のものだ……。わしたちは、ある秘密の相談をするために、こんな骸骨のシャツを着て、会議をひらいているが、けっして、悪事(あくじ)をはたらいているのではない。四十面相などとは、なんのかんけいもない。」
「ところが、あの骸骨のひとりに、四十面相が化けていたのですよ。あいつは、そうして、あなたがたの秘密を、さぐりだしにきたのです。」
「いや、そんなことはない。にせものなれば、黄金どくろを持っているはずがない。わたしたちは、みんな一つずつ、黄金どくろを持っている。それがなによりのしょうこなのだ。」
「じゃあ、ぼくもしょうこを見せてあげましょう。それはたぶん、一階のどこかの部屋に、ころがっているはずですよ。」
 小林君は、博士を手まねきしながら、ドアのそとへ出ていきます。博士は、そうまで言われて、もしやという、うたがいがおこったのでしょう。そのまま、小林君といっしょに、地下室の階段をのぼって、一階の廊下に出ました。
 小林君はさきに立って、廊下にならんでいるドアを、つぎつぎとひらいて、なかをのぞいてゆきましたが、ある部屋のドアをひらくと、ハッとしたように立ちどまって、博士のほうをふりむき、目で「ここだ。」という、あいずをしました。
 博士もいそいで、その部屋にはいってみますと、ガランとしたあき部屋のゆかに、金色の骸骨が、ながながと、横たわっていました。口には、さるぐつわをはめられ、手と足を、グルグルまきに、しばられているのです。
 ふたりはおどろいて、そのそばにかけよりさるぐつわをとり、なわをといて、ようすをたずねますと、その人は、まさしく、博士の親戚の人のひとりで、廊下を歩いていると、とつぜん、自分とおなじ骸骨のシャツを着た男が、とびだしてきて、アッと思うまに、こんなめにあわされてしまった。そのとき黄金どくろも、とられてしまった、と言うのでした。
 博士は、この骸骨男と、小林君を、書斎にあんないして、イスをすすめ、骸骨のふくめんをとって、顔をあらわしました。
 小林君が、このまえすきみした、主人の博士にちがいありません。半分白くなったオールバックの頭と三角がたのあごひげに見おぼえがあります。博士はデスクの上からロイドめがねをとって、かけました。すると、いよいよ、あのときの博士の顔と、そっくりになるのでした。
 あき部屋にたおれた骸骨男も、ふくめんをとりさりました。これも五十歳をこした中老の、りっぱな紳士です。頭の毛はうすく、でっぷりふとった、あから顔で、ひげはありません。
 博士はその紳士に、いままでのことを、ひととおり説明したあとで、小林君のほうに、向きなおりました。
「小林君、きみは、わしたちの味方だろうね。つまり、四十面相の怪人は、おたがいの敵というわけだね。」
「もちろんです。ぼくは四十面相のやつには、ふかいうらみがあるのです。ですから、四十面相が、あなたがたの秘密を、ぬすんだとすれば、ぼくは、あなたがたの味方になって、四十面相のじゃまをしてやりますよ。それにしても、黄金どくろの秘密というのが、なんのことだか、ぼくには、すこしもわかりません。それを話してください。」
 小林君が、ハキハキした口調で、たずねました。
「ウン、黄金どくろの暗号の文句は、きみも、すっかり聞いてしまったのだから、かくしてもしかたがない。じつは、わたしたちは、何百億、何千億という、ばくだいな宝のありかを、さがしている。さっき、地下室で、きみが聞いた暗号をとけば、その宝のありかが、わかるのだ。
 くわしいことは、あとで話すが、いまから百年ばかりまえに、ある人が、ばくだいな金のかたまりを、どこかへかくして、そのかくし場所を、三つの黄金どくろに、暗号でほりつけておいたのだ。
 わしは、ながいあいだ苦心をして、そのことを発見した。黄金どくろの秘密は、わしが持っているが、あとのふたつをさがすのに、ずいぶんほねをおった。そして、やっと、ふたつのどくろの持主をみつけて、暗号のけんきゅうをはじめたところなのだ。
 だが、わしたちは、けっしてどろぼうをやるのじゃない。百年まえに金のかたまりをかくしたのは、大阪の大金持の、黒井惣右衛門(くろいそうえもん)という人だが、わしは、その四代めの子孫にあたる黒井十吉(くろいじゅうきち)というものだ。ついこのあいだまで、大学でドイツ文学をおしえていた。ここにおられるのは松野(まつの)さんという、ミシン製造会社の社長さんで、やはり惣右衛門の子孫だ。それからさきに帰ったもうひとりは、八木(やぎ)さんという貿易会社の社長さんで、やっぱり惣右衛門の子孫なのだ。つまり、わしたちは、先祖の宝物をさがしだそうとしているのさ。」
「わかりました。ところが、黄金どくろをもっている、惣右衛門さんの子孫は、三人だと思っていたのが、そうではなくて、四人だったことがわかったのですね。」
 小林少年は、さっき地下室で聞いたことをすばやく思いだして、たずねました。
「そうなんだ。そのほかに、考えようが、ないのだ。」
「ああ、きっとそうです。四十面相のやつが、そのもうひとつの黄金どくろの、ありかを知っているのですよ。でなければ、あんな苦労をして、あなたがたの会議の席へしのびこむわけがありません。」
 それを聞くと、黒井博士は顔色をかえて、思わずイスから立ちあがりました。
「ウーン、そうか。しまった。すると、あいつは、もう、すっかり暗号をといてしまったかもしれない。小林君、なぜ、もっとはやく、わしにおしえてくれないのだ。あいつを逃がしては、とりかえしがつかないじゃないか。」
「いいえ、逃がしゃあしません。ちゃんと、つかまえています。」
「エッ、つかまえているって? どこに……。」
「ぼくには、チンピラ別働隊という、たくさんの部下があります。今夜、ぼくが、ここへしのびこむまえに、そのうちの、二十人のすばしっこい少年たちを、おたくのまわりへ、配置しておきました。けっして、四十面相を逃がすようなことはありません。いまに、なにか知らせがあります。ぼくは、チンピラどもの腕まえを、信じています。」
 小林君は、リンゴのようなほおを、いっそう赤くして、さも、自信ありげに、言いきるのでした。


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