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铁塔王国的恐怖-山中小屋的盗贼
日期:2021-11-22 23:52  点击:278

山小屋のぬし


 それから、小林君は自動車をおりて、そこにぼんやりとつったったまま、あたりをながめていましたが、ふと気がつくと、遠くの方に、モヤモヤと動いているものがあるのです。おやっとおもって、よくみますと、それは白い、ひとすじの煙でした。むこうの森の中から煙がたちのぼっているのです。
 煙が出ているからには、あのへんに人が住んでいるのかもしれない。そう考えると小林君は、にわかに元気づいて、その方へ、歩きはじめました。やっぱり、道もない森の中を、クマザサをかきわけて歩くのです。煙のあがっているところは、すぐそばのように見えていたのに、森の中へはいっていくと、方角がわからなくなって、なかなか、その場所がみつかりませんでしたが、ずいぶん歩きまわったすえ、やっと、小さな山小屋をみつけました。
 それは、丸太を組んでつくった七―十平方メートルの、ほったて小屋ですが、ちかよって、のぞいて見ると、中に人がいるようすなので、入口に立って声をかけてみました。
 すると「オー」とこたえて、小屋のあるじが出てきました。顔じゅうひげにうずまった、おそろしげな男です。かれは小林君のこじき姿を、ジロジロながめていましたが、ふしぎそうに、
「おめえのような子どもが、いまじぶん、どうしてこんな山おくへやってきただ。」
 とたずねます。
「道にまよったのです。おじさん、ぼくをとめてください。つかれてしまって、おなかがペコペコで、もう歩けません。」
 小林君は、あわれっぽくもちかけました。
「ふーん、道にまよったといって、こんな人もとおらぬ山おくへまよってくるなんて、おめえ、よっぽど、どうかしているぞ。だが、まあいい、こっちへはいるがいい。めしぐれえ、くわしてやるだ。」
 こわい顔ににあわぬ、しんせつな男でした。小林君は、例の大袋を持ったまま、小屋の中にはいって、いろりのそばに腰をおろしました。
 やがて、男は、いろりにかけてあるなべの中から、ぞうすいのようなものをちゃわんによそって、小林君にたべさせてくれました。小林君は、それをすすりながら、
「おじさんは、こんなところで、なにをしているの?」
 と、たずねてみました。
「おれか、おらあ猟師だよ。この山にゃ、いろんな鳥やけだものがいるからな。それをとって、ふもとの村へ売りにいくだ。それがおれのしょうべえさ。アハハハ……。」
 と、大きな口をあいて笑いました。顔じゅうひげだらけで、まっ黒ですから、ひらいた口の中が、おそろしく赤いように見えました。
「ぼく、道にまよってね、このへんの山んなかを歩きまわったんだよ。そうすると、このむこうの方に大きな鉄のお城があったよ。おじさん知ってる?」
「知ってるとも。」
「あれ、だれのお城なの? だれがすんでいるの?」
「ばけものがすんでいるさ。」
「えっ、ばけものだって?」
「カブトムシのばけものだ。この山んなかに、イノシシほどもあるカブトムシのばけものが、ウジャウジャすんでるだ。ふもとの村でも、それを知ってるから、だれもこの山へのぼらねえ。おれたちのなかまの猟師や木こりも、みんなにげだしてしまった。おれはごうじょうもんだからな、にげねえ。いまじゃ、この山んなかに、すんでるのは、おれひとりになっちまった。ワハハハ……。」
 男はまた、大きなまっかな口をひらいて、笑いとばすのでした。
「おじさん、そのカブトムシに、であったことあるの?」
「なんどもあるよ。だが、おらあ、カブトムシのばけものだけは、うたねえ。たたりがおっかねえからな。カブトムシがあらわれたら、こっちでにげだすのよ。」
「そのカブトムシが、あの鉄の城にすんでるの?」
「そうだ。城の中にゃ、カブトムシの王さまがいるだ。ほかのカブトムシは、みんなその王さまのけらいだっていうことだ。」
「鉄の門がピッタリしまっているね。あの門がひらくことがあるの?」
「おらあ、ひらいているのを、見たことがねえ。いつでもピッタリしまってるんだ。おれは、いっぺん、おっかねえ音をきいたことがあるぞ。城の中が見たいとおもってね、あの鉄のへいのまわりを、グルグルまわってみたが、どこにもすきまがねえ。それで、おら、鉄の門に耳をおっつけて、中の音でも聞いてやろうとおもっただ。すると、なあ、小僧、おっかねえ音がきこえただ。何百というカブトムシがはいまわってる音だ。ゴジョ、ゴジョ、ゴジョ、ゴジョ、何千人の人が、ないしょ話をしているような、いやあな音だった。おら、ゾーッとして、いちもくさんに、にげだしただ。それからというもの、いくら命しらずのおらでも、気味がわるくて、あの城にゃ、近よる気がしねえ。遠くから、チラッとあの鉄の塔のてっぺんが見えても、おら、おじけをふるって、にげだすだよ。」
 山小屋のぬしの大男は目を異様に光らせてあたりを見まわしながら、さもこわそうにいうのでした。


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