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铁塔王国的恐怖-妖虫的最后
日期:2021-11-23 10:08  点击:279

妖虫のさいご


 鉄の城の建物という建物は、数十人の警官隊にとりかこまれ、カブトムシ王国はじまっていらいの大混乱がおこっていました。さらわれてきた少年たちの兵隊は、だれも手むかいなどしません。みんな警官のみかたになって、怪人団のおとなたちの部屋の、あんない役をつとめました。
 怪人団の悪人どもは、さすがに、がんこに、てむかいをしました。深夜の大戦争でした。城の中には、秘密の地下道だとか、いろいろなしかけがあって、二十数人の悪人どもを、すっかり捕えるのには、二時間あまりもかかったほどで、警官隊に数人のけが人もでました。
 そうして、すっかり、しばりあげてしまって、少年たちに、もうほかに悪人はいないかとたずねますと、かんじんの鉄塔王国の首領がいないという答えでした。つまり、怪人二十面相だけが、どこかへ、姿をくらましてしまったのです。いや、姿の見えないのは、二十面相ばかりではありません。名探偵明智小五郎も、どこかへ、くもがくれしてしまって、いくら、さがしてみても、みつからないのでした。
 そのとき、明智探偵は、怪人二十面相と、一騎うちの勝負をしていたのです。二十面相は、すきを見て、ただひとり鉄塔の方へにげていきました。明智は、はやくも、それをみつけて追せきしたのです。おわれていると気づいた二十面相は、とある小部屋へにげこんで、中からドアにかぎをかけてしまいました。明智は、からだごと、そのドアにぶつかって、とうとうそれをやぶりましたが、たった二―三分のあいだに、どこへにげたのか、部屋の中には、だれもいなくなっていました。出入り口は、いまやぶったドアのほかにはありません。
 明智は四方の壁をたたきまわって、秘密の通路でもあるのではないかと、しらべましたが、べつにあやしいところもないのです。
 そのとき、てんじょうのほうに、みょうな、もの音がしました。「さては。」とおもって、懐中電灯でてらしますと、てんじょうから、ドシンと、おそろしい音をたてて、一ぴきの巨大なカブトムシが、目の前に落ちてきました。
 二十面相は、明智がドアをやぶっている、わずかのひまに、その部屋においてあったカブトムシのからを身につけて、とくいのわざで、壁をはいあがってかくれたのでしたが、いつまでも壁をはっていくことはできません。やがて力がつきて、床の上に落ちたのです。
 それから、また、巨大なカブトムシと明智探偵との、おっかけっこが、はじまりました。カブトムシはスルリと身をかわして、廊下に出ると、鉄塔のほうへ、おそろしい早さで走っていくのです。
 カブトムシは鉄塔の一階にかけこむと、例の鉄のはしごをのぼりはじめました。二階、三階、四階つぎは屋上です。その屋上への鉄ばしごにとりついたカブトムシは、明智探偵を見おろして、おそろしい、笑い声をたてました。
「ワハハハ……、明智先生、おれをおいつめたとおもって、とくいになっているね。だがおれのほうには、武器があるんだ。きみを、あっといわせる武器があるんだ。おい、明智先生、この上の屋上には、だれがいるとおもう。きみのだいじな弟子の小林と、それから賢二が、空中のろうやに、とじこめてあるんだ。ふたりの子どもが、ひとじちだ。きさまが、おれをとらえようとすれば、このふたりを塔の上からつき落としてしまう。ワハハハ……、どうだ、例によって、これがおれのおくの手だよ。さすがの明智先生も、こうなっては、手だしもできまい。ワハハハ……。」
 いいのこして、二十面相のカブトムシは、そこの鉄のふたをかぎでひらき、屋上へ、はいあがっていきましたが、あがったかとおもうと、「あっ。」と、おどろきのさけび声をたてました。
 そのころ、夜はしらじらとあけて、鉄塔の屋上は、もうあかるくなっていました。そのひと目で見える、屋上に、小林少年と賢二少年の姿が、どこにも見あたらなかったのです。二十面相のカブトムシは、あわてふためいて、屋上をかこむ鉄のてすりを、おそろしい早さで、さがしまわりました。しかし、てすりの外に、身をかくしているようすもありません。
 まったく、ありえないことがおこったのです。屋上へのただひとつの出入り口には、ちゃんとかぎがかかっていました。塔からとびおりるはずはありません。そんなことをすれば命がないのです。ではどこへかくれたのか。いや、かくれる場所なんて、ぜったいにありません。ああ、ふたりの少年は、魔法をつかって、煙となって、空へまいのぼってしまったのでしょうか。
 そう考えて思わず空を見あげたとき、その空のかなたから、ブーンという異様な音がひびいてきました。そして、一羽の巨大な鳥が、こちらへ近づいてくるのです。いや鳥ではありません。もう夜があけたので、その姿が、はっきり見わけられます。それは一台のヘリコプターでした。
 ヘリコプターは、みるみる鉄塔の真上にきて、透明な乗員席が、よく見えるほどの、近さにありました。それを見ると、二十面相のカブトムシはふたたび「あっ。」と、さけび声をたてないではいられませんでした。その透明な乗員席には、操縦士のほかに、小林少年と、賢二少年がのりこんで、にこにこしながら、塔上の怪物を見おろしていたからです。
 さっき、二少年をめがけて、とんできたのは大ワシではなくて、このヘリコプターだったのです。むろん明智探偵のはからいで、塔上の二少年をすくうために、長野県警察の手で、近くの町からの電話れんらくによって、松本市の新聞社から呼びよせたものでした。そして、ヘリコプターから、縄ばしごをおろして、ふたりを、すくいあげたのです。
 そうこうするうちに、明智探偵をさがしていた警官たちが鉄塔に気づいて、塔の一階にかけつけ、鉄ばしごをふみながら、屋上へおしよせてきました。屋上は、もう警官でいっぱいです。
 二十面相は、もうどうすることもできません。警察につかまってしまうばかりです。
 塔上に進退(しんたい)きわまった巨大な妖虫は、ジリジリと、あとずさりをして、一方のすみの鉄のてすりに、からだをくっつけてしまいました。
 つぎの瞬間には、おそろしいことがおこりました。カブトムシは、てずりをのりこえたのです。明智探偵も、おおぜいの警官たちも、思わず「あっ。」と、声をたてました。しかし、もうおそかったのです。
 巨大なカブトムシは、てすりの外がわに、しばらく、しがみついていましたが、やがて、スーッと、目もくらむ数十メートルの地上へと、矢のようにおちていきました。そのとき、かすかに「あばよ!」という声が、聞こえたように思われました。
 これが、日本じゅうをさわがせたカブトムシ大王、怪人二十面相の、あわれなさいごだったのです。


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