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夜光人-恐怖的坟场
日期:2022-01-09 23:43  点击:241

墓地の恐怖


 それから二日ほどたった夜ふけのこと、(みなと)区の白金(しろがね)町にある妙慶寺(みょうけいじ)というお寺の墓地に、またしても、あの銀色の化けものがあらわれたのです。
 やっぱり、夜の十一時ごろのことでした。おしょうさまが、手洗いに起きて、窓から墓場のほうを見ますと、たちならぶお墓の間に、白いものが動いているような気がしましたので、泥坊でもはいったのではないかと、寺男のじいやを起こして、墓場を見まわるようにいいつけました。
 じいやは懐中電灯を持って、墓場へはいっていきました。
 大きいのや、小さいのや、いろいろの形の墓石が、ズウッとならんでいて、その間を、ほそい道が、ぐるぐるまわりながらつづいています。
 じいやはそこを、あちこちと歩きまわってみたのです。そして、墓場のまん中までたどりついたときです。闇の中から何者かが、パッととびかかってきて、手に持っている懐中電灯をうばいとってしまいました。
 懐中電灯が消えると、あたりは、手さぐりで歩かなければならないほどの暗さでした。
 あいてが何者だか、まったくわかりません。
 じいやは、いまにも、だれかが組みついてくるのではないかと、みがまえをしましたが、すると、そのとき、じつにふしぎなことがおこったのです。
 むこうの墓石の上に、パッと、銀色のまるいものが、あらわれました。
 銀色の顔です。
 そいつが、まっ赤に光る大きな目で、じっと、こちらを、にらみつけているのです。
 口がパクッと、ひらきました。
 ああ、その口! もえるように、まっ赤な口です。
 そして、ケラ、ケラ、ケラと、なんともいえない、きみのわるい笑い声が聞こえてきたではありませんか。
 墓石の上に、ちょこんと、銀色の首がのっかっているのです。その首ばかりの化けものが、まっ赤な口で笑っているのです。
 こんなふしぎなことが、あるものでしょうか。
 じいやは、ゾーッとして、身うごきもできなくなってしまいました。
 すると、墓石の上の首が、ふっと見えなくなったのです。
「オヤッ、それじゃあ、いまのは、わしの気のせいだったのかな?」
と思っていますと、こんどは、二メートルもへだたった、べつの墓石の上に、おなじ銀色の首が、パッとあらわれたではありませんか。
 そして、赤い口で、ケラ、ケラと笑うのです。
 しばらくすると、また、パッと消えました。
 消えたかとおもうと、こんどは、ちがった方角の墓石の上にあらわれ、まっ赤な口を、パクパクさせます。
 そして、消えたり、あらわれたり、あちこちの墓石の上に、とびうつって、めまぐるしく動きまわるのです。
 じいやは、あっちを見たり、こっちを見たり、目がまわるような気持ちでした。
 しまいには、墓石という墓石の上に、銀色の首が、何十となくのっかって、その首がみんな、じいやをにらみつけて、ケラ、ケラ、ケラ、ケラと笑っているように、おもわれてくるのでした。
 そのとき、うしろから、じいやの腕を、ぐっと、つかんだやつがあります。
 ギョッとして、ふりむくと、そこに、白い着物をきた人間が立っていました。
「アッ、常念(じょうねん)さん。」
「うん、ぼくだよ。」
 それは、おしょうさまの弟子の、常念という若い坊さんでした。寝床からとびだしてきたとみえて、白いもめんの寝巻きに、ほそおびをしめているのです。
「あれはだれかが、いたずらしているんだよ、黒い服を着ているので、首ばかりのように見えるんだ。こわくはないよ。ふたりで、とっつかまえてやろうじゃないか。」
 若い坊さんは、ひどくいせいがいいのです。そういわれると、じいやも元気が出てきました。
「うん、わしも、むかしは、柔道できたえたからだだ。あんな化けものに、負けるもんか。」
「よしッ、やっつけよう。じいやさんは、あっちがわから、ぼくはこっちがわから、あいつを、はさみうちにするんだ。」
「うん、わかった。さあ、行くぞッ。」
 そこで、ふたりは、銀色の首ののっている墓石の両がわから、とびかかっていきました。
 ケラ、ケラ、ケラ、ケラ……。
 怪物は、まだ笑っていました。まさか、つかまえにくるとは思わないので、つい、ゆだんをしていたのです。
 そこへ、両がわから、ふたりが、ぶっつかってきたので、どうすることもできません。たちまち恐ろしいとっ組みあいがはじまりました。
 怪物には、からだがあったのです。ぴったり身についた黒シャツをきて、黒い手袋、黒い靴下をはいていました。いくら怪物でも、ふたりの力には、かないません。いちどは、地面におさえつけられてしまったように見えました。
 三つのからだが、とっ組みあったまま、墓石のあいだをころげまわりました。
 そうしているうちに、べりべりと音がして、怪物の黒シャツの胸のところが、やぶれました。そして、その下からあらわれてきたのは、おお、銀色のからだ、怪物はからだまで銀色に光っていたのです。
 こちらのふたりは、それに気づくと、おもわず、ギョッとして、手をゆるめました。
 そのすきに、怪物は、ふたりをつきはなして、パッと立ちあがり、いきなり、むこうへかけだしていきます。
 そして、このあいだのばん、少年探偵団員たちが見たのと、おなじことが、おこりました。
 墓場のおくに林があって、そのなかに一本の大きなスギの木が、そびえていました。十メートルもある大きな木です。そのスギの木の下に、黒シャツをぬいだ全身銀色の人間が、こちらをむいて、つっ立っているではありませんか。でっかいまっ赤な目、火を吹きだしそうな、大きな赤い口、その口が、あいたりふさいだりして、ケラ、ケラ、ケラ……と、笑っているのです。
 全身銀色にかがやく、恐ろしいすがたを見ては、こちらのふたりも、きゅうに近よる勇気がありません。
 いったい、この銀色のやつは、何者でしょう。人間か、動物か、それとも、遠くの星から地球へやってきた、別世界のいきものか?
 まもなく、いっそう、へんてこなことがおこりました。銀色のやつが、空へ、のぼっていくのです。スギの木の幹を、よじのぼるのではありません。葉のしげった表面を、スーッとのぼっていくのです。
 いよいよ人間わざではありません。やっぱり星の世界からきた怪物なのでしょうか。
 みるまに、銀色のやつは、スギの木のてっぺんまでのぼりました。そして、パッと、すがたを消してしまったのです。
 いつまで待っても、怪物がすがたをあらわさないので、こちらのふたりは、おしょうさまの部屋にもどって、このことをしらせ、すぐに一一〇番へ電話をかけました。
 すると、五分もたたないうちに、白いパトロール=カーがかけつけ、車内にそなえつけてあった小型の探照灯で、墓地やスギの木をてらして、しらべてくれましたが、怪物のすがたは、どこにもありませんでした。
 では、怪物は、スギの木をスルスルとのぼって、そのてっぺんから、闇の空たかく消えていってしまったのでしょうか。そして、どこかの星の世界へ、かえってしまったのでしょうか。
 こうして、夜光怪人は、東京のあちこちへ、三ども、すがたをあらわし、三どめには、警官がかけつけるというさわぎになりましたので、新聞がだまっているはずはありません。東京の新聞はもちろん、地方の新聞までが、この奇怪な夜光怪人の記事を、でかでかとのせました。
 血なまぐさい犯罪の記事になれている読者も、このお化けみたいな銀色怪人の出現には、すっかり、おどろいてしまいました。ことに東京の人は、ま夜中に、その恐ろしい銀色のやつが、じぶんのうちのまわりを、うろうろしているのではないかと、みんな、びくびくものでした。
 それは、人工衛星がうちあげられ、空とぶ円盤の話が、またやかましくなっているころでしたから、銀色の怪物も、どこかの星からの使いではないかと、きみのわるいうわさが、ひろがったほどです。


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