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夜光人-魔法大揭秘
日期:2022-01-09 23:43  点击:236

魔法のたね


「さあ、聞こう、きみがどこまで、おれの秘密を知っているか、話してみたまえ。」
 にせ明智は立ちはだかったまま、あざけるように、いうのでした。
「夜光人間には、きみが化けることもあるし、きみの部下が化けることもある。夜光塗料をぬったビニールのシャツとズボンをはくのだ。顔や手には、じかに夜光塗料をぬる。目には赤ガラスのめがねをかけ、そのめがねに豆電球をつけて、まっ赤に光らせているのだろう。口の中にも豆電球をいれて、火をはくように見せているのだ。その電球は、ほそいコードで、ポケットに入れた乾電池につながっている。これはぼくの想像だが、たぶんまちがいないだろう。え、どうだね。」
「うん、まあそんなとこだ。で、夜光人間が、空へのぼるのは?」
「高い木のてっぺんから、綱をさげて、それをのぼるのだ。夜だから、綱は見えない。そして、てっぺんまでのぼって、黒いシャツとズボンをはき、顔は覆面でかくしてしまう。すると、なにも見えなくなる。てっぺんで、すがたが消えるので、空中へ飛びさったように見えるのだよ。」
「うん、そのとおりだ。では、どうして、仏像や白玉をぬすんだのか、それをいってみたまえ。」
「夜光人間は、しめきった部屋の中へ、はいれるはずがない。だから、あいつは、窓の外をうろついたばかりで、ものをぬすんだのではない。ぬすんだやつは、べつにいるのだ。
 まず、杉本さんの書斎から推古仏をぬすんだやりかたをいうと、あの推古仏は、もともときみのものだったのだ。」
「え、おれのものだって?」
「そうだよ。杉本さんと、きみとは、おなじ人間だったのさ。」
「え、なんだって?」
「きみは変装の名人だ。だれにでも化けられる。きみはいろいろな人間に化けて、ほうぼうに家をもっている。
 ここのうちには、伊達五郎という表札が出ているが、きみは伊達五郎という人間になって、ここに住んでいる。それとおなじように、きみは杉本という人間になって、世田谷のあのうちにも住んでいるのだ。
 そして、夜光人間にねらわれたように見せかけて、きみは、じぶんの仏像をじぶんでぬすんだのだよ。あのとき、あの部屋は密室になっていた。だれもはいれるはずはない。部屋にいたのは、きみと小林だけだった。
 夜光人間は、窓の外を、うろうろしていたけれども、部屋の中へははいれない。ぬすんだのは主人の杉本、すなわち、きみだった。小林が窓の外の夜光人間に気をとられているすきに、あの小さな仏像を、内ポケットにしまいこんだ。そして、夜光人間にぬすまれたように、見せかけたのだ。
 夜光人間が幽霊のように、しめきった部屋へしのびこめるということを、世間に見せつけたのだ。そうしておけば、こんど他人のものをぬすむときにも、やっぱり夜光人間のしわざだと、思わせることができるからね。今夜は、きみは、ぼくに化けて、赤森さんの美術室に、ひとりでいた。ドアには、中からかぎをかけ、刑事たちが、はいってこないようにしておいて、きみは、ひとしばいをやったのだ。
 夜光人間が、部屋にはいってきて、きみと取っくみあっているように、見せかけたのだ。どすんどすんと、音をさせたり、うめき声をたてたりしてね。
 みんなが心配して、ドアをやぶって部屋にはいってきたときには、夜光人間にやられたようにして、たおれていた。そのじつきみは五つの白玉を、ほうぼうのポケットにひとつずついれて、たおれていたのだ。ちゃんと、ぬすんでしまっていたのだ。
 そして、名探偵明智小五郎が、大失敗をやったということにして、こそこそ赤森さんのうちを逃げだしたというわけさ。ぼくこそ、いいめいわくだ。ぼくは夜光人間と、取っくみあって、気をうしなうような弱むしじゃないからね。」
「うん、えらいッ! なにもかも、きみのいうとおりだ。さすがによく見やぶった。それじゃあ、もうひとつの秘密も、きみは、とっくに感づいているのだろうね。」
 にせ明智は、そういって、じっと、あいての顔を見つめました。どちらがどちらと、見わけのつかないほどそっくりのふたりの明智探偵が、立ちはだかったまま、おたがいの目を、見つめあっていました。たっぷり一分間ほども、そうして、じっと、にらみあっていたのです。
「むろん、知っている。」
 しばらくして、ほんものの明智探偵が、にっこりして、いいました。そしてかれの右手が、スウッと前にのびたかとおもうと、まっこうから、にせ明智の顔をゆびさしました。
「きみは四十面相だッ! そのまえの名は二十面相といったね。」
 ピシッ、むちをうつような、するどい声でした。
「で、おれが四十面相なら、どうしようというのだ。」
「警察にひきわたすのだ。さっきもいったとおり、このうちは警官隊にとりかこまれている。きみはもう、ぜったいに逃げることはできないのだ。」
「ふふん、いよいよ、ふくろのネズミというわけか。だがね、明智君、おれはたびたび、こういうめにあっている。そのたびに、おくの手が用意してあるかもしれないぜ。」


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