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夜光人-大侦探现身
日期:2022-01-10 19:38  点击:266

あらわれた名探偵


 そのときあたりが、パッと、まひるのように明るくなりました。電灯がついたのです。
 その光で、もういちど部屋の中をしらべてみましたが、どこにも、あやしいところはありません。明智探偵と四十面相と、それから夜光怪人の三人は、すこしのすきまもない部屋の中から、完全に消えうせたことが、はっきりとわかりました。
 しばらくすると、廊下のほうから、
「アッ、明智先生!」
という声が聞こえ、警官たちのざわめきがおこりました。
 その声に、中村警部たちが廊下へとびだしてみますと……。
 ごらんなさい、むこうから名探偵明智小五郎が、ゆうゆうと歩いてくるではありませんか。
 警官たちが、左右に道をひらいたなかを、明智探偵は、にこにこしながら、こちらへやってきました。
「おお、明智君、きみは、いったいどこへ行っていたのだ。どうして、この部屋をぬけだすことができたんだ。」
 中村警部が、明智をでむかえながら、ふしぎそうにたずねました。
「じつに、恐ろしい奇術だ。四十面相でなければ、できないことだ。」
 明智探偵は、感心したようにつぶやくのでした。
「エッ、四十面相だって?」
 警部が、びっくりして聞きかえします。
「ああ、きみにはまだ、いっていなかったね。ぼくに化けて、白玉をぬすみだしたやつは、じつは怪人四十面相なのだ。四十面相でなくては、あんなにうまく化けられるはずはない。」
「エッ、それじゃあ、こんども四十面相のしわざだったのか。ちくしょう、また世間をさわがせる気だなッ。それで、きみは、あいつをつかまえたのか。」
「いや、残念ながら逃げられてしまった。あいつは奥の手があるといったが、まさか、こんな大じかけな奥の手とは、夢にも思わなかったのでね。」
「じゃあ、逃げたんだな。どこへ逃げたんだ。すぐに、追っかけなけりゃあ。」
「いや、もう追っかけても、まにあわない。それに、ぼくのほうにも、もうひとつ奥の手があるんだ。そこから知らせがあるまでは、さわいでもしかたがない。それよりも、ぼくたちが、どうしてこの部屋から消えたのか、その秘密をお目にかけよう。」
 明智はそういって、ひとりで部屋の中へはいると、ドアをもとのとおりになおして、入口をふさぐようにさしずをしました。
「いいかい、三分たったら、このドアをあけるんだよ。それまでは、みんな廊下で待っていてくれたまえ。いま四十面相の大秘密を、といてみせるからね。」
 やぶれたドアをなおして、入口がふさがれました。
 中村警部は、なにがなんだかわけがわかりませんが、ともかく腕時計とにらめっこをして、三分がたつのを待ちました。
 やっと三分がすぎたので、待ちかねて、ドアをひらかせてみますと、アッ! これはどうでしょう。部屋の中は、また、からっぽになっていたではありませんか。
「明智君、どこへかくれたのだ。おい、明智君……。」
 警部は、大きな声で、どなりました。すると、どこか遠くのほうからかすかに、明智の声が聞こえてきました。
「おうい、中村君、もういちど、ドアをしめるんだ。そしてまた、三分したらあけてみたまえ。」
 おなじことばが、二どくりかえされました。それで、やっといみがわかったのです。それほど、かすかな声でした。
 中村警部は部屋の壁を、こつこつ、たたきまわってしらべましたが、どこにも、あやしいところはありません。
 明智探偵は、壁の中に、かくれているのではないことがわかりました。
 そこで警部は、また廊下に出て、ドアをしめ、腕時計をにらみはじめました。
 そして、三分たったときに、もういちど、ドアをひらきました。
「ハハハハハ……。どうだい、秘密のたねがわかったかね。」
 部屋の中で、明智探偵が笑っていたのです。
 中村警部は「アッ。」とおどろいて、あいた口がふさがりません。
「わからないね。いったい、これはどうしたわけなんだい?」
「四十面相でなくてはできない大奇術さ。そのいみはね……。」


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