白い幽霊
それから四日めのばんのことです。こんどは、丈吉君の妹のヨシ子ちゃんが、恐ろしいものを見ました。
ヨシ子ちゃんの寝室は、西洋館の二階にありました。にいさんの丈吉君の寝室とならんでいて、六じょうほどの小さい部屋に、小さいベッドがおいてあるのです。
ヨシ子ちゃんは、寝るときも、部屋の電灯をぜんぶ消してしまわないで、ベッドのよこの小さい台の上の、青いかさの電灯だけは、つけておくことにしていました。
ま夜中の二時ごろのことです。なにかにおさえつけられるような感じがして、ふと目をさましますと、ベッドのまくらもとに、白いものが、スウッと立っていました。
おとなくらいのせいの高さの、ぼやっとした白いものでした。目も鼻も口もない、白いものでした。
ヨシ子ちゃんは、それを一目見ると、びっくりして、あたまから毛布をかぶってしまいました。
「ヨシ子ちゃん、ヨシ子ちゃん……。」
ないしょ話のようなささやき声が、聞こえてきました。白い幽霊が呼んでいるのです。
ヨシ子ちゃんは、かぶった毛布を、両手でしっかりおさえて、がたがたふるえていました。いまにも、気がとおくなりそうでした。
「九月二十日。いまから七日だよ、ヨシ子ちゃん。」
また、そんなささやき声が聞こえてきました。
九月二十日とはなんでしょう。きょうは九月十三日ですから、二十日は、いまから七日あとですが、それが、いったい、どうしたというのでしょう。
しかし、ヨシ子ちゃんは、そんなことを考える力もなく、ただこわさに、ふるえおののいているばかりでした。
しばらくそうしていましたが、もう、声は聞こえないのです。ヨシ子ちゃんは、毛布をすこしまくって、そっとのぞいてみました。
なにもいません。白い幽霊は消えてしまったのでしょうか。
ヨシ子ちゃんは、ベッドの上にすわって、部屋じゅうを見まわしました。幽霊はどこにもいないのです。
「夢だったのかしら。でも、夢じゃないわ。あんなにはっきり、声を聞いたのですもの。」
ヨシ子ちゃんは、もうがまんができなくなって、寝室をとび出すと、となりの丈吉君の部屋へかけこんでいきました。
「なんだ、ヨシ子じゃないか。どうしたんだ、いまごろ。」
丈吉君はびっくりして、ベッドの上におきなおりました。
「ゆ、ゆうれいが出たのよ……。」
「エッ、幽霊だって?」
「ええ、目も口もない、まっ白な幽霊よ。」
「なあんだ、夢でも見たんだろう。幽霊なんているもんか。ヨシ子はばかだなあ。いまごろおこされて、ぼく、眠いじゃないか。」
「でも、あたし、こわくて、ひとりでは、寝られないわ。」
「よわむしだなあ。じゃ、しかたがないから、ぼくがヨシ子の部屋へいって本を読んでやるよ。そして、ヨシ子が眠るまで、いてやるよ。」
やさしい丈吉君は、妹の部屋へいって、ヨシ子ちゃんが眠るまで、見はり役を、つとめるのでした。