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塔上的奇术师-3,2,1
日期:2022-01-18 18:29  点击:307

3・2・1


 小林少年が園田家にとまりこんだ、あくる朝七時ごろのことです。
 小林君が目をさまして、ベッドの中でぼんやりしていますと、となりの部屋から、「キャアッ。」という、ひめいが聞こえてきました。たしかに、ヨシ子ちゃんの声です。
 小林君は、ベッドをとびおりて、パジャマのまま、となりの部屋へかけこみました。
 ヨシ子ちゃんがひどいめにあっているのではないかと、心配しましたが、そんなようすはありません。
 ヨシ子ちゃんも、丈吉君も、ベッドの上におきなおって、まっ青な顔になって、なにか話しあっているのです。
「どうしたんです。いま、さけんだのは、ヨシ子ちゃんでしょう。」
 小林君が声をかけますと、丈吉君がこちらをむいて、
「また、へんなことがおこったのですよ。ヨシ子の手のひらに、3という数字が筆で書いてあるのです。ぼくらが、寝ているあいだに、なにものかがしのびこんで、書いていったのにちがいありません。」
 そういって、ヨシ子ちゃんに左のてのひらを出させて、小林君に見せるのでした。
 ふたりの寝室のドアには、かぎはかかっていませんから、だれかが、しのびこもうと思えばしのびこめるのですが、そんないたずらをする人間が、園田さんのうちにいるはずはありませんから、くせものは、外からしのびこんだと考えるほかはないのです。
 ところが、夜はすっかり戸じまりがしてありますから、それをやぶらなければ外からははいれません。あとで、よくしらべてみましたが、戸じまりの、ふじゅうぶんなところや、外からやぶられたところなど、ひとつもないことがわかりました。
 いったい、くせものは、どこからはいって、どこから出ていったのでしょうか。
 園田さんは、いよいよ心配になってきましたので、つぎのばんから、ヨシ子ちゃんと丈吉君を、一階の園田さんの寝室へ、いっしょに寝させることにしました。そして、その両がわの部屋を、小林少年と書生の寝室にして、いざというときの用心をしました。
 そのばん八時ごろのことです。小林少年は、寝るまえに、たてものの外をひとまわりしておこうと、まっ暗な庭を、しずかに歩いていました。
 ぐるっと回って、時計塔のよこに出ました。五階だての時計塔は、やみの空に、黒い巨人のようにそびえています。小林君は、じっと、それを見あげました。
 そのとき、じつに、ふしぎなことがおこったのです。
 時計塔の四階の壁が、ボウッと明るくなりました。どこかから、光がさしているのでしょう。さしわたし五メートルほどのまるい光が、幻灯のように、浮きあがっています。
 そして、その光の中にくっきりと、巨大な数字が……2という数字がうつっているではありませんか。
「あと二日しかないぞ。」
という、あの恐ろしいしらせです。
 小林君は、この巨大な幻灯のもとは、どこだろうと、あたりを見まわしました。
 どうも、この幻灯機械は、塀の外の林の中にすえつけてあるとしか、考えられません。それをたしかめるために、小林君は、門を回って、塀の外へ出ようかと思いました。
 ところが、そうして歩きかけた小林君の足を、くぎづけにするような、へんてこなことがおこったのです。
 ごらんなさい。時計塔のてっぺんの、避雷針の上で、白いものが、くるくる回っているではありませんか。
 幻灯のまるい光が、そこを照らしました。夜空にひらめくまっ白なもの。人間ほどの大きさの、ふわふわした白いものが、風車のように、くるくる、くるくる、回っているのです。
 小林君は、ふと、ヨシ子ちゃんの見たという白い幽霊を思い出しました。
「あいつは、あの幽霊じゃないだろうか。幽霊が、避雷針の上で、ぐるぐる回っているのじゃないだろうか。
 いつかは、あの避雷針の上で、道化師がぐるぐる回ったことがある。あいつは回るのがすきだ。そして、そのあとでは、きっと、恐ろしい事件がおこるのだ。」
 そんなことを考えて、ふしぎな風車を見あげていますと、白いものの回転が、だんだんゆるくなり、やがて、ぴったりとまりました。そして、その白い幽霊が、スウッと、こちらへ、とびついてきたではありませんか。
 小林君は、ひじで顔をかばって、思わず、そこにしゃがみました。
 目も口もない、のっぺらぼうの白い幽霊は、しばいの幽霊とおなじ、長いしっぽをひいて、小林君のあたまの上を、おそろしいはやさで、塀の外へとびさっていきました。
 小林君は、大いそぎで門を回って塀の外に出、林の中にはいっていって、あちこちとさがしましたが、白い幽霊も、幻灯機械も、とうとう発見することができませんでした。


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