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铁人Q-深入贼穴
日期:2022-01-30 13:26  点击:235

ポケット小僧の冒険


 ポケット小僧は、川の岸に身をかくして、じっとそれを見ていましたが、あいにく、川の底へ、もぐられてしまっては、どうすることもできません。
 しばらく待っていても、鉄人Qの姿が、水面に現われてくるようすはありません。いったい、どこへ行ってしまったのでしょう。
 ポケット小僧は、腕組をして、しばらく考えていましたが、ふと気がついたのは、鉄人は、川の底から、この岸にならんでいる、どこかの家へはいっていったのではないかということでした。
 その家の地下室が、川の中に通じていて、そこからもぐりこんで、階段をあがれば、一階の部屋へ、出られるのではないかと、いうことでした。
 ポケット小僧は、川っぷちに立っている家を、一軒ずつ、のぞきながら、歩いていました。
 すると、さっきQが、川へおりていった石段から、三軒目に、みょうな家がありました。門のついた、三階だての、古い西洋館で、見るからに、あやしげな建物です。
 門の鉄の戸を押してみると、スーッとあきましたので、ポケット小僧は、そっと中へしのびこみました。
 川っぷちのことですから、庭というほどのものはありません。門をはいると、すぐに西洋館の入口になっています。ドアを押してみましたが、かぎがかかっていて開きません。
 そこで、西洋館の横手の方にまわってみました。一階の窓が、ひとつだけ、明るくなっています。だれかその部屋に、いるのでしょう。
 ポケット小僧は、その明るい窓に近づいて、そっと、中をのぞいてみました。窓の中に、カーテンがさがっていますが、すきまがあるので、部屋のようすが、よく見えるのです。
 へんなおじいさんが、長いすに腰かけて、たばこをすっています。大きなめがねをかけ、白い口ひげと、あごひげをはやし、灰色の背広をきているのです。
「この人は、もしかしたら、鉄人Qを作ったおじいさんじゃないかしら?」
 ポケット小僧は、ふっと、そんなことを考えました。あのおじいさんは、鉄人Qが、悪いことをしだしてから、どこかへ姿を、かくしてしまいましたが、あれから、ここのうちに、かくれていたのでは、ないでしょうか。
 もし、これが、あのおじいさんならば、鉄人Qは、川の底から、この西洋館へ、帰ってくるのにちがいありません。
 そこまで、考えると、ポケット小僧は、胸が、ドキドキしてきました。
 窓わくに、しがみつくようにして、しんぼうづよく、のぞいていますと、やがて、その部屋の向こうがわのドアが、スーッと細目にひらき、外から、だれかの顔がのぞきました。
 あっ、鉄人Qです。
 あの、のっぺりした白い顔、赤いくちびる、大きな目。
 ドアが、いっぱいに開いて、そいつが部屋の中へはいってきました。ロボットのような歩き方、鉄人Qが、川の底から、いま、あがってきたのです。洋服はべっとり、水にぬれています。
 おじいさんのそばによって、なにか話しています。窓は、ガラス戸がしまっているので、声は聞きとれませんが、きっと宝石をぬすんで、川の底から、はいってきたといっているのでしょう。
 鉄人Qが、ポケットから、キラキラ光る宝石を、いくつもとりだして、テーブルの上におきました。
 おじいさんが、にこにこ笑って、それを見ています。
 このようすでは、おじいさんも、仲間なのです。
 鉄人Qに、いろいろなものをぬすませて、よろこんでいるのです。
 ポケット小僧は、このことを、少年探偵団長の、小林少年に知らせようと思いました。
 それで、窓わくから手をはなして、外へ出ようと、くるっと、うしろをふりむきますと、あっ! そこのやみの中に、大きな人間の姿が、ヌーッと立ちはだかっていました。
 ポケット小僧は、あっ! といって、逃げだそうとしましたが、そのとき、男の両手が、ぐっとのびて、たちまちつかまえられ、こわきにかかえられてしまいました。
 男の大きな手が、口をおさえているので、叫ぶことができません。ただ手足を、バタバタやるばかりです。
 ポケット小僧は、部屋の中に気をとられて、うしろから、そんな男が、近づいてきたことを、少しも知らなかったのです。この男は、鉄人Qやあやしいおじいさんの仲間のやつに、ちがいありません。
 男は、ポケット小僧を、こわきにかかえたまま、ドアをあけて、家の中にはいり、うすぐらい廊下を通り、そこにある階段を、コトンコトンと、のぼっていきます。
 そして、二階から三階へとのぼりましたが、まだ、とまりません。急な、細いはしごを、四階へとのぼるのです。
 その家は、三階だての西洋館ですから、四階などないはずですが、あとで考えると、そこは、屋根裏部屋だったのです。
 男は、ポケット小僧をそのせまい屋根裏部屋におろすと、どこからか、なわを出して、小僧の手足をしばり、口にはハンカチのようなもので、さるぐつわをはめてしまいました。
「ウフフフ……、おまえは少年探偵団のチンピラだろう。鉄人Qは、おまえが、あとをつけてきたことを、ちゃんと知っていたんだ。それで、このうちに気がついて、はいってくるだろうから、つかまえてくれと、頼まれたんだよ。おれは、あのじいさんの仲間のものだ。じゃあ、今夜は、ここでねるがいい。あすの朝になったら、飯は、食わせてやるからな。」
 男は、そういったまま、ドアをしめ、外からかぎをかけて、どこかへ立ち去ってしまいました。
 ポケット小僧は「アリの町」で、くず拾いをやっている、チンピラ隊のひとりですから、板の間にねることなんかへいきです。
「つかまってしまったら、じたばたしたって、しかたがない。今晩は、ゆっくり眠って、夜があけてから、よく考えるんだ。」
 そう思って目をつむると、やがてぐっすりと眠りこんでしまいました。からだは小さいけれど、大胆不敵(だいたんふてき)な少年です。
 どのくらい眠ったかわかりませんが、だれかに、からだをさわられたような気がして、ふと目をさましました。
 あたりは、まっくらです。まだ夜中なのでしょう。小さな窓があって、外のあかりが、うっすらとさしこんでいます。じっと目をあけていると、あたりが、深い水の底のように、ぼんやりと見えてきます。
 カタカタカタ……かすかな物音。なんだか、床板の上を走っているのです。むろん人間ではありません。小さなやつです。
「あっ、ネズミだ。さっき、だれかにさわられたように思ったのは、ネズミが、からだの上を歩いたのにちがいない。」
 ポケット小僧は、やっと、そこに気がつきました。古い西洋館ですから、屋根裏に、ネズミが巣をつくっていても、ふしぎはありません。
 ネズミとわかると、すっかり安心して、また、グウグウねこんでしまいました。
 このネズミのおかげで、ポケット小僧は、あとで、ここから逃げだすことが、できるのですが、その晩は、まだそこまでは、考えていませんでした。
 つぎに目をさましたときは、もう朝でした。
 ポケット小僧は、よく、眠ったので、すっかり、元気になっていました。床にころがったまま、どうして逃げだそうかと考えていますと、ドアが開いて、ゆうべの男が、朝御飯を持ってきてくれました。
 男は、そのぼんを、床において、ポケット小僧のさるぐつわをとり、手足のなわをといてくれました。
「さあ、洗面所へ、連れていってやる。それから朝飯だよ。」
 男は、そういって、ニヤニヤ笑いました。


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