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铁人Q-妖怪别墅
日期:2022-01-30 13:26  点击:235

おばけの家


 二少年は、あまりのおそろしさに、思わずあとずさりをしたので、窓の外においてあった、ふみだいの木の箱から、足をふみはずしてしまいました。
 ころびそうになるのを、やっと、ふみこたえましたが、すると、そのとき、まっくらな庭の、うしろの方から、ケラケラケラという、ぶきみな笑い声が、聞こえてきました。
 はっとして、ふりむきますと、そこのやみの中に、小さなおばけが立っていたではありませんか。
 窓からもれてくる、かすかな光で、そのおばけが、ぼんやりと見えています。
 そいつは、少女の一つ目小僧でした。まっ白な大きな顔の、(ひたい)のまん中に、目が一つしかないのです。そして、まっかなくちびるをひらいて、ケラケラと笑っているのです。
 そのおばけには、足がないように見えました。ちんちくりんの、まっかなワンピースを着ていてパッとひらいたスカートの下に、なんにもないのです。一つ目の顔と、ワンピースだけが、宙に浮いているのです。
 二少年は、
「ワーッ。」
と叫んで、逃げだそうとしました。すると、おばけが、
「逃げなくてもいいわよ。話があるのよ。」
と、呼びとめました。かわいらしい少女の声です。声は少しもおばけらしくありません。
 二少年は、立ちどまって、ふりむきました。すると、ちんちくりんのスカートの下に、まっ黒な長い足がついていることがわかりました。黒い靴下をはいているので、やみにとけこんで、ちょっと見たのでは、わからなかったのです。
「びっくりしなくってもいいわよ。あたし、おばけじゃないのよ。三千代(みちよ)ちゃんというのよ。」
 少女は、ほがらかな声でいって、かぶっていた、はりこの頭を、両手で、スッポリと、ぬいでみせました。
 すると、その下から、目の二つある、ふつうの少女の顔が、現われたではありませんか。
「なあんだ、きみ、一つ目小僧じゃなかったのかい。」
 中井君が、安心したように、いいました。
「ええ、おばけのまねをしていただけよ。」
「きみは、ここのうちの子かい。」
「そうじゃないわ。ロボットに、さらわれてきたのよ。」
「へえ、さらわれたの? ロボットって、鉄人Qのことだね。」
「名前は知らないわ。でも、鉄でできたロボットよ。」
 ああ、鉄人Qは、またしても、こんな少女をさらってきたのでしょうか。まえには、村田ミドリちゃんという、かわいらしい少女をさらって、上野公園の五重の塔にかくれていたことがあります。こんどもまた、同じようにして、この少女をさらったのかもしれません。
「じゃあ、逃げればいいじゃないか。どうして、逃げないの?」
 中井君がたずねますと、少女はまたケラケラと笑いました。
「逃げられないわ。あんたたちだって、逃げられないのよ。ほら、ごらんなさい。」
 少女が、すぐうしろの、やみの中を、指さしました。
 思わず、その方を見ますと、くらやみの中から、ボーッと、現われてきたものがあります。
 そいつは、まっ四角な、大きな箱のような顔をしていました。胸も、腹も、まっ四角です。手や足は、四角な棒のようです。そいつが、ガクンガクンと、機械みたいな歩き方で、こちらへ、近づいてくるではありませんか。背の高さも、おとなよりずっと大きいのです。
 それが一つだけではありません。二つ、三つ、四つと、やみの中から、つぎつぎと、おそろしい姿を現わしてくるのでした。
 これこそロボットです。四角な顔、四角なからだをしたロボットです。
 四つの大きなロボットが、やみの中から、現われて、二少年をとりまいてしまいました。
 ロボットが足を動かすたびに、ギリギリ、ギリギリと、歯車の音がします。機械でできているらしいのです。
「ね、逃げられないでしょう。こいつらが、番をしているのよ。逃げようとすれば、ひどいめにあわされるわ。」
 少女は、べつにこわがってもいないような、ほがらかな声で、いうのでした。
 しかし、少年たちは、おそろしさに、ガタガタふるえて、ものもいえないのです。
「ここは、おもしろいうちよ。おばけの家なのよ。だから、あたしも一つ目小僧にされちゃったのよ。でも、こわいことはないわ。あたし、強い子だから、へいきよ。ここのうちにいるのが、たのしいくらいだわ。あんたたちも、きょうから、このうちに、いなければいけないのよ。そしておばけになるのよ。」
 少女が、へんなことを、いいだしました。
「おばけになるんだって。」
 中井君が、びっくりして、聞きかえします。
「そうよ。ここのうちには、おばけがウジャウジャいるのよ。あたしたちも、その仲間いりするんだわ。」
「きみは、へいきなんだね。だが、ぼくたちはいやだよ。おうちへ帰らないと、しかられるからね。」
「だって、帰ることはできないんですもの。あたしも、はじめは、帰ろうとしたの。でも、そうすると、ひどいめにあうのよ。おそろしいめにあうのよ。だから、あたしおばけになったの。おばけになれば、だれも何もしないで、おいしいごちそうを、たくさん食べさせてくれるのよ。」
 少年たちは、少女のいうことが、よくわかりませんでした。おばけになれば、ごちそうが食べられるなんて、なにがなんだか、すこしもわけがわからないのです。
 いくらごちそうが食べられたって、おばけの家に、とじこめられるのは、いやです。そのうえ、このうちには、あのおそろしい鉄人Qが住んでいるのですから、こんなうちにいるなんて、まっぴらごめんです。
 中井少年と北見少年は、たがいに目くばせをして、サッと、逃げだそうとしました。
 すると、少年たちをとりかこんでいた四つのロボットが、ギリギリと、歯車の音をさせながら、ぐうっと、近よってくるのです。
 そのとき、四つのロボットの目が、まっかに光りだしたではありませんか。
 ロボットの四角な顔に、ちゃわんのような大きな目が、まっかにかがやいているのです。その目でにらみつけながら、ギリギリと、近づいてくるのです。
 少年たちは、あまりのこわさに、両手で目をふさいで、そこへうずくまってしまいました。
 ロボットたちは、おそろしい力で、ふたりの少年の両手を、左右から引っぱって、どこかへ連れていくのです。少年たちは、目がくらんで、どこをどう歩いたのか、まるでわかりませんでした。
 ふと気がつくと、いつのまにか、部屋の中へきていました。ロボットや、さっきの少女は、どこかへいってしまって、目の前には、あのおそろしい鉄人Qが、ニヤニヤ笑って立っているのでした。
 さっきは、首も、手も、足も、バラバラになってしまった怪人が、いまはもとの姿にもどって、そこにつったっていたのです。
「ハハハハハハ……。おどろいたかね。しかし、きみたちが、おとなしく、このうちにいれば、ひどいめにあわしやしないよ。だが、それには、やくそくがある。いいかね、ここはおばけの家だ。だから、きみたちも、おばけにならなくてはいけないのだ。さあ、この服と着かえて、このおばけの頭をかぶるのだ。」
 そういって、鉄人Qが指さしたテーブルの上を見ると、そこには、青い服と、青いズボンと、それから、さっきの少女がかぶっていたのとそっくりの、一つ目小僧の、大きなはりこの頭が、おいてあるのでした。
 二少年は、しかたがないので、おばけの頭を、かぶろうとしていますと、そのとき、部屋の向こうの黒いカーテンの上に、白いものが現われたかとおもうと、それが宙に浮いて、フワフワと、こちらへ近づいてくるのが見えました。
「あっ、がいこつの首だ……。」
 北見君が、まっさおになって、思わず、つぶやきました。すると、鉄人Qが、ぶきみに笑って、
「ウフフフフ……、どうだい? ここはほんとうにおばけやしきだろう。あのがいこつが、なにをするか、よく見てごらん。」
と、いいました。
 がいこつの首は、しばらく、空中をとびまわっていましたが、それが動かなくなると、首の下にパッと、胴体が現われ、両手がくっつき、両足がはえて、ちゃんとしたがいこつになってしまいました。
 そして、おどりながら、あちこちと、歩きまわっていましたが、すると、こんどは、両手が、胴体を離れて、スーッと、てんじょうの方へ、飛んでいってしまい、足も消え、胴体も消えてしまって、がいこつの首だけが、そこのテーブルの上に、ちょこんと、のっかりました。
「ウフフフ……、きみたち、この奇術のたねがわかったかね。」
 鉄人Qが、笑いながらたずねるのです。
「あっ、わかった、ブラック=マジックだ、そうでしょう?」
 中井少年が、叫ぶようにいいました。
「そうかもしれない。じゃあ、そのわけを話してごらん。」
 鉄人Qは、まるで学校の先生のように、やさしくたずねるのでした。
「この部屋の電灯は、みんなこっちを向いていて、あの黒いカーテンの方へは、光がとどかないようにしてある。これが奇術のたねですよ。だから、黒いカーテンの前では、黒い着物を着ていればこちらからは、すこしも見えません。まっ白なものだけが、見えるのです。だから、人間が黒いシャツとズボンをつけ、それに白いえのぐで、がいこつの絵を書いておけば、黒いところは、こちらから見えないので、ほんとうのがいこつが、おどっているように、思われるのです。がいこつの首が、テーブルに乗っかったり、手がてんじょうへとんでいったりしたのは、がいこつの人形の首や手ばかりが、べつに用意してあって、それに黒いきれをかぶせて、かくしてあるのです。まっ黒なシャツとズボンをつけて、黒覆面をした人が、それをあやつるのですよ。黒いきれをとれば、がいこつの首や手が現われるし、かぶせれば、消えてしまうのです。さっき鉄人Qの首が、テーブルの上に乗っかったのも、同じわけですよ。あれは人形の首だったのです。」
 中井少年は、りっぱに奇術のたねあかしをしてみせました。
「えらいっ、そのとおりだ。だがね、このおばけやしきには、ブラック=マジックばかりじゃない。もっといろいろな秘密のしかけがあるのだよ。だが、きょうは、これだけにしておこう。いまきみたちの部屋へ、案内させるからね。」
 鉄人Qは、おだやかな口ぶりで、そういうのでした。


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