B・Dバッジ
「おじさんは、鉄人Qといわれているけど、ほんとうは、だれなのですか。そして、おじさんは、ぼくたちを、つかまえて、どうしようというのですか。」
中井君が、勇敢にたずねました。すると、鉄人Qは、少しも動かない鉄の顔で、うすきみわるく笑いました。
「ウフフフ……、おれはだれでもない、鉄人Qというロボットだよ。それから、きみたちをつかまえたわけはね。きみたちのおとうさんの持っている美術品を、おねだりしたいからだよ。それには、きみたちを、人質にした方が、つごうがいいからね。ウフフフ……、おい、このふたりを、六号室へぶちこむんだっ。」
それをきくと、ドアの向こうにいた、ひとりの部下が、のっそりとはいってきて、二少年の手をとりました。
「さあ、こっちへくるんだよ。」
そのまま、廊下をグルグルまわって、旧式な鉄のベッドが、一つしかおいてない、きたない部屋へ、とじこめられてしまいました。
ドアには、外からかぎをかけられ、一つしかない窓には、鉄ごうしがはまっているので、逃げだすなんて、思いもよりません。ふたりは、もう、あきらめて、ベッドに腰かけて、グッタリとしていました。
ベッドの上には、あの青い服と、一つ目小僧のはりこの頭が、二つずつおいてあります。部下のやつが、すぐに、それをかぶれといって、おいていったのです。
ふたりは、しばらく、ぐったりしたまま、ものもいわないでいましたが、やがて、中井少年が、ぐっと、顔をあげました。目がキラキラ光っています。
「あっ、いいことを思いついた。」
そういうと、いきなり、窓のところへ走っていって、ガラス戸を、上にあげました。外に鉄ごうしがはまっているので、ガラス戸には、かぎがかかっていないのです。窓の外には、高いコンクリートべいが、つづいていて、外は見えませんが、そこは道路にちがいないのです。
「うまいっ、ここからほうればいいんだ。」
中井君は、そんなひとりごとをいって、ポケットから、手帳と鉛筆をとりだし、なにか書きつけて、それを北見君に見せました。
その横に、この西洋館への道順を図でしめし、明智探偵事務所のある、麹町アパートへの道順も書いてあります。
と書きくわえました。
北見少年が、それを読んでいるあいだに、中井少年は、ズボンのポケットをジャラジャラいわせて、なにか、つかみだしました。にぎった手をひろげると、そこに二十個ほどのB・Dバッジが、ウジャウジャと、のっています。
北見君はまだ知りませんでしたが、このたくさんのB・Dバッジは、少年探偵団員の七つ道具の一つなのです。それには、いろいろな、使いみちがありましたが、そのうちのひとつを、中井君はいま、思いだしたのです。いったい、どんな使いみちだったのでしょうか。