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铁人Q-地底下的森林
日期:2022-01-30 13:43  点击:277

地底の森


 あたりは、まっくらです。まっくらな地の底へ、スーッと落ちていくのです。
 ああ、わかりました。かがみの部屋の床が、下へ開くようになっていたのです。鉄人Qが、どこかのスイッチをおして、とつぜん、それを開いたのです。
 かがみの部屋は、一階にあるのですから、その下は地下室です。それとも、井戸のような、深いあなかもしれません。
 小林君もポケット小僧も、スーッとおちていきながら、もう死んでしまうのかと思いました。
 ドシーン……。おしりが、ぶっつかりました。なんだかやわらかいものの上に、落ちたのです。べつにけがをしたようすもありません。
 しばらく、そのままじっとしていますと、目がなれるにしたがって、あたりがぼんやりと見えてきました。
 ふしぎ、ふしぎ。そこは、たくさん木のはえた森の中でした。落ちたのは、やわらかい草の上です。
「へんだなあ、こんな地の底に、森があるなんて。」
 いよいよ、ゆめでも見ているような気持です。これも、おばけやしきの、しかけの一つなのでしょうか。
 まわりには、いろいろな、ふとい木の幹が、立ちならんで、見とおしもきかないくらいです。頭の上には、木の葉がいっぱい茂っていて、いま落ちてきた、かがみの部屋が、どの辺にあるのか、すこしもわかりません。
「あらっ……?」
 そのとき、ポケット小僧が、何を見たのか、びっくりしたような声を立てました。
「ね、あすこ、ほら、木の幹のあいだから、チラチラ見えるだろう。ね、赤い服をきた、一つ目小僧が……。」
 ポケット小僧が、ささやきました。小林君も、その方を見て、
「あっ、ひょっとしたら、あれ、ここにとらえられている女の子かもしれないよ。さっき中井君が、そんなこといってたから。」
「あ、そうだね。じゃあ、小林さん、いいことがあるよ。」
 すばしっこいポケット小僧は、なにかうまいことをおもいついたらしく、目を光らせて、小林君の耳に、ヒソヒソと、ささやくのでした。
「じゃあ、やってみたまえ。女の子をこわがらせないようにね。」
 小林君がいいますと、ポケット小僧は、一つ目小僧の変装のまま、木の幹から、木の幹をつたうようにして、そっと、向こうの一つ目小僧のほうへ、近づいていきました。
 それから、どんなことがあったのか、わかりませんが、しばらくすると、一つ目小僧が、小林君のそばへ、もどってきました。しかし、なにもいいません。だまって、小林君のそばに立っているばかりです。小林君の方でも、何もききません。ふたりとも、だまったまま、そこにじっとしていました。
 やがて、向こうの方から、みょうな音が聞こえてきました。ザワザワと、風の吹くような、きみの悪い音です。直径一メートルもあるような、ふとい木が、草の中に、横倒しになっているように見えました。しかも、それが、動いているのです。
 その大きな木は青ぐろい色をしていました。それが、草をザワザワいわせながら、こちらへ近づいてくるのです。
 木が、ひとりで動くはずはありません。これは、いったいどうしたことでしょう。
 あっ、その木のはしに、二つの大きな目がついていました。自動車のヘッドライトほどもある大きな目が、白く光るのではなくて、リンのように青くもえているのです。
 それは、どんな動物園でも、見たことがないほど、おそろしく大きなニシキヘビでした。
 ポケット小僧が、
「キャーッ。」
といって、小林君にしがみついてきました。
 ガタガタふるえています。
 いまの「キャーッ。」という声は、ポケット小僧にしては、ひどくかんだかい声でした。それにガタガタふるえているのも、いつも大胆な、ポケット小僧らしくありません。まるで人がかわってしまったようです。しかし、小林君は、べつに、あやしむようすもなく、「だいじょうぶだよ。」というように、一つ目小僧にばけたポケット小僧を、だきしめてやりました。
 おそろしいニシキヘビは、だんだん、こちらへ近づいてきます。小林君たちは、思わず、ジリジリと、あとずさりをしました。
 大ヘビが、かまくびをもたげて、青く光る目で、ふたりを、じっと見つめました。そして、まっかな口を、ガッと開いたのです。
 ああ、その口。小林君たちふたりを、パクッと、ひとのみにできるような。大きな口です。その口の中が、まっかなのです。ギザギザのとがった歯が、ズーッとならび、ゾウのきばのような大きなきばが、ニューッと、二本はえています。
 ペロペロ、ペロペロと、赤ぐろい、ほのおのような舌が、目にも見えない早さで、とびだしてきました。それが、小林君のほおを、なめたのです。ゾッとするほど、つめたい舌でした。
「ウヘヘヘヘヘ……。」
 おそろしい、笑い声が、ヘビの口の中から、もれてきました。ニシキヘビが笑ったのでしょうか。
 まっかな口が、小林君の目の前で、ガッと開いています。いまにも、のみこまれそうです。小林君は、思わず、その口の奥を見ました。そして、さすがの小林君も、あまりのおそろしさに、まっさおになってしまいました。
 ヘビののどの奥に、みょうなものが見えたのです。なんとも、えたいのしれない、へんてこなものでした。
 それは大きな白いまるいもので、そのまるいものに、目や、鼻や、口がついているのです。人間の顔に、似ています。
 それでは、さっき笑ったのは、ヘビではなくて、ヘビののどの奥にいる、このへんなやつだったのでしょうか。
「ウヘヘヘヘ……。」
 そうです。たしかに、のどの奥のやつが、笑っているのです。そいつの赤いくちびるが、笑ったかっこうになっています。
 これはどうしたというのでしょう。笑っているやつは、この大ヘビにのまれたのでしょうか。しかし、それならば、のんきに笑っているはずはありません。ではこいつは、あまりのこわさに、気がちがってしまったのでしょうか。
 小林君たちが、みいられたように、身動きもできなくなって、立ちすくんでいますと、その大蛇ののどの奥の怪物が、
「ウヘヘヘヘ……。」
と笑いながら、だんだん、こちらへ出てきたではありませんか。
 そのときの、なんともいえないこわさを小林君は、一生わすれることができませんでした。
 その怪物は、鉄人Qだったのです。大蛇はつくりもので、機械で動くようになっていて、そののどの奥に、鉄人Qがかくれていたのです。そして少年たちを、こわがらせたのです。
 鉄人Qは、すっかり大蛇の口から、外に出て、そこに、すっくと、立ちはだかりました。
「ウヘヘヘヘ……、どうだ、おどろいたか。ここは、おれのつくった魔の森だ。まだまだおそろしいものが、どっさりいる。小林とポケット小僧には、うらみがあるからな。もっともっとこわい思いをさせてやるのだ。どうだ、小林、さすがのきみも、おそろしくて、ふるえているじゃないか。」
 鉄人Qは、さもおもしろそうに、あざけるのでした。
 しかし、小林君も負けてはいません。
「ふるえてなんかいるもんか。おばけやしきは、じつにゆかいだよ。その大蛇だって、こしらえものだし、みんな、きみがつくったおばけだから、ちっともこわくないよ。それより、きみこそ、用心するがいいんだ。」
「おや、へんなことをいうね。ここは地の底の森の中だぜ。負けおしみも、いいかげんにするがいい。きみたちは、たったふたり、おれの方には、たくさん部下がいるんだ。きみたちは、ぜったいに、逃げだせっこないんだぞ。」
「そう思っているだろうがね。ぼくも、ポケット小僧も、きみよりは、知恵があるんだ。いまに、びっくりしないように、用心するがいい。」
 鉄人Qは、それを聞くと、しばらくだまっていました。すこしうすきみが悪くなってきたのかもしれません。そして、小林君たちが、なにをたくらんでいるのかと、じっと考えているようでした。
 やがて、ふと気づいたように、
「おやっ、おしゃべりのポケット小僧が、ちっとも、しゃべらないのは、どうしたんだ。きさま、なんだか、へんだぞ。いつものポケット小僧より、からだが大きいじゃないか。」
と、一つ目小僧の仮面をかぶったポケット小僧を、にらみつけました。
「ウフフフフ、とうとう、きがついたのかい。」
 小林君が、さもおかしそうに笑いました。
「これはポケット小僧じゃないんだよ。きみ、その仮面をぬいでごらん。」
 小林君がてつだって、一つ目小僧の仮面をぬがせますと、それは、かわいらしいおかっぱの女の子でした。
「あ、おまえは、三千代だな……。」
 鉄人Qが、びっくりして、叫びました。いつか、中井、北見の二少年を、びっくりさせたあの少女なのです。
「そうだよ。ポケット小僧と入れかわったのさ。女の一つ目小僧は、赤い服を着ているんだが、ポケット小僧は、それを自分が着て、自分の青い服を、この子に着せたのさ。」
「で、そのポケット小僧は、どうしたんだ。」
「外で待っているおまわりさんたちと、連絡するために、この女の子に、出口をおそわって、出ていったんだよ。」
 それを聞くと、鉄人Qは、両手をサッと上にあげて、みょうなかっこうをしました。かんかんにおこったしるしです。
「うぬっ、もう、かんべんできない。きさまたち、ふたりとも、この大蛇に食わせてしまうぞっ……。」
と、おそろしい声で、どなって、大蛇の首の辺に手をやりました。機械を動かすボタンでも、押したのでしょう。
 すると、いままでじっとしていた大蛇が、あのまっかな口をひらいて、いきなり小林君と三千代ちゃんの方へ、おどりかかってくるのでした。


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