なわばしご
パタンと音がして、へやの床板が二つにわれました。小林少年のおしたボタンがはたらいて、おとし穴の口が開いたのです。そこへ、はらばいになって、懐中電燈を、さしつけてみると、ふたりの少年が、いま、ゴボゴボとしずんでいくところでした。いつも腰にまきつけているナイロンのなわばしごには、細いナイロンのひもに、三十センチおきに、足がかりの玉がついています。それに足のゆびをかけて、おりたり、のぼったりするのです。少年探偵団の七つ道具とはべつに、おもな団員が持っている、たいせつな道具です。
小林君は、そのなわばしごのはしを、ふたりのおまわりさんに、にぎっていてもらって、スルスルと、つたいおりていきました。
「井上君、ポケット君、助けにきたぞっ。しっかりするんだっ」
しかし、返事はありません。ふたりとも、気をうしなっているのです。スーッと、水の底へしずんでいくのです。
小林君は、服のまま、水の中へとびこみました。そして、まずポケット小僧のからだに、なわばしごのはしを、まきつけて、しっかりくくってから、合図をしました。
すると、上のおまわりさんが、力を合わせて、これを、引っぱりあげてくれるのです。小林君はそのあいだ、水の中をおよいでいました。
そして、つぎには井上君を助け、最後に小林君は、なわばしごを、つたって、もとのへやにかえりました。
こうして、井上君とポケット小僧は、すくわれたのです。みんなのかいほうをうけて、やがて正気にかえりました。