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阿势登场 二(2)
日期:2022-04-03 23:57  点击:253
 最初二三度は、彼は(わざ)と鬼になって、子供達の無邪気な隠れ場所を探し廻った。それにあきると隠れる側になって、子供達と一緒に押入れの中だとか、机の下だとかへ、大きな身体(からだ)を隠そうと骨を折った。
「もういいか」「まあだだよ」という掛声が、家中に狂気めいて響き渡った。
 格太郎はたった一人で、彼の部屋の暗い押入れの中に隠れていた。鬼になった子供が「何々(なになに)ちゃんめっけた」と呼びながら部屋から部屋を廻っているのが(かすか)に聞えた。中には「ワーッ」と怒鳴(どな)って隠れ場所から飛び出す子供などもあった。やがて、銘々(めいめい)発見されて、あとは彼一人になったらしく、子供達は一緒になって、部屋部屋を探し歩いている気勢(けはい)がした。
「おじさんどこへ隠れたんだろう」
「おじさあん、もう出ておいでよ」
 などと口々に(しゃべ)るのが聞えて、彼等は段々押入れの前へ近づいて来た。
「ウフフ、パパはきっと押入れの中にいるよ」
 正一の声で、すぐ戸の前で(ささや)くのが聞えた。格太郎は見つかり相になると、もう少しじらしてやれという気で、押入れの中にあった古い長持(ながもち)(ふた)をそっと開いて、その中へ忍び、元の通り蓋をして、息をこらした。中にはフワフワした夜具かなんかが入っていて、丁度寝台にでも寝た様で、居心地が悪くなかった。
 彼が長持の蓋を閉めるのと引違いに、ガラッと重い板戸が開く音がして、
「おじさん、めっけた」
 という叫び声が聞えた。
「アラッ、いないよ」
「だって、さっき音がしていたよ、ねえ何々ちゃん」
「あれは、きっと(ねずみ)だよ」
 子供達はひそひそ声で無邪気な問答をくり返していたが、(それが密閉された長持の中では、非常に遠くからの様に聞えた)いつまでたっても、薄暗い押入れの中は、ヒッソリして人の気勢もないので、
「おばけだあ」
 と誰かが叫ぶと、ワーッと云って逃げ出して了った。そして、遠くの部屋で、
「おじさあん、出ておいでよう」
 と口々に呼ぶ声が幽に聞えた。まだその辺の押入れなどを開けて、探している様子だった。


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