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一本の釣りざお(1)
日期:2022-09-01 23:23  点击:328

一


 あるさびしい海岸かいがんに、二人ふたりの漁師りょうしが住すんでいました。二人ふたりとも貧まずしい生活せいかつをしていましたから、町まちや都みやこに住すんでいる人々ひとびとのように、美うつくしい着物きものをきたり、うまいものをたくさん食たべたり、また、ぜいたくな暮くらしなどをすることは、思おもいもよらないことでありました。
 二人ふたりは、どうかして、もっといい暮くらしをしたいものだと思おもいましたけれど、どうすることもできなかったのです。青あおい海うみの面おもてを見みつめながら、二人ふたりは、そのような幸福こうふくになれる日ひのことばかり考かんがえていました。
「いくら考かんがえたってしかたがないことだ。俺おれたちは働はたらくより途みちがないのだ。」と、乙おつは甲こうを悟さとし、自分じぶんを勇気ゆうきづけるようにいいました。
「それはそうだが、このうえ俺おれたちは働はたらくこともできないじゃないか。」と、甲こうは、ため息いきをしながら答こたえた。
 ほんとうに、二人ふたりは、雨あめの降ふる日ひも、また風かぜが吹ふいて、少々しょうしょう波なみが高たかいような日ひでも、船ふねに乗のって沖おきに出でて、網あみを打うったり、魚さかなを釣つったりしたのであります。
 なにごとも二人ふたりは、たがいに助たすけ合あいました。そして、たいていはいっしょに働はたらいていたのであります。けれど、人間にんげんの運うんというものは、まことに不思議ふしぎなものでありました。こうして、同おなじ船ふねに乗のって、同おなじく働はたらいても、一人ひとりに幸さいわい、一人ひとりにはなんでもないこともあるものです。
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