不死の薬(1)_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网
日期:2024-10-24 10:29 点击:3366
二
「
君!
金峰仙って、あの
山かい。」
といって
乙は、あちらに
見える
山の
方を
指して
丙に
問いました。
「ああ、あの
山だって、
死んだおじいさんがいったよ。」
と
丙が
答えました。
「
君はその
話をおじいさんから
聞いたのかい。」
と
甲が
問いました。
「ああ。」
と、
丙は
軽くそれに
答えて、また
話を
続けました。
天子さまは
家来をお
集めになって、だれかその
薬を
取ってきてくれるものはないかと
申されました。みなのものは
顔を
見合わして
容易にそれをお
受けいたすものがありません。するとその
中に
一人の
年老った
家来がありまして、
私がまいりますと
申し
出ました。
天子さまは、
日ごろから
忠義の
家来でありましたから、そんなら
汝にその
不死の
薬を
取りにゆくことを
命ずるから、
汝は
東の
方の
海を
渡って、
絶海の
孤島にゆき、その
国の
北方にある
金峰仙に
登って、
不死の
薬を
取り、つつがなく
帰ってくるようにと、くれぐれもいわれました。
その
老臣は、
謹んで
天子さまの
命を
奉じて、
御前をさがり、
妻子・
親族・
友人らに
別れを
告げて、
船に
乗って、
東を
指して
旅立ちいたしましたのであります。その
時分には、まだ
汽船などというものがなかったので、
風のまにまに
波の
上を
漂って、
夜も
昼も
東を
指してきたのでありました。
老臣は
船の
上で、
夜になれば
空の
星影を
仰いで
船のゆくえを
知り、また
朝になれば
太陽の
上るのを
見てわずかに
東西南北をわきまえたのであります。そのほかはなにひとつ
目に
止まるものもなく、どこを
見ても、ただ
茫々とした
青海原でありました。あるときは
風のために
思わぬ
方向へ
船が
吹き
流され、あるときは
波に
揺られて
危うく
命を
助かり、
幾月も
幾月も
海の
上に
漂っていましたが、ついにある
日のこと、はるかの
波間に
島が
見えたので
大いに
喜び、
心を
励ましました。
その
家来は
島に
上がりますと、
思ったよりも
広い
国でありました。そこでその
国の
人に
向かって
金峰仙という
山はどこにあるかといって
尋ねましたけれど、だれひとりとして
知っているものがなかったのです。
その
時分は
大昔のことで、まだこの
辺りにはあまり
住んでいるものもなく、
路も
開けていなかったのでありました。
家来は
幾年となくその
国じゅうを
探して
歩きました。そして、ついにこの
国にきて、
金峰仙という
山のあることを
聞いて、
艱難を
冒して、その
山にのぼりました。
「そんな
年老った
家来が、どうしてあんな
高い
山にのぼったのだい。」
と
甲が
不思議そうにして
丙に
問いました。
「ほんとうに、あの
山へはだれも
上れたものがないというよ。」
と
乙は
声をそろえていいました。
「いつであったか、
探検隊が
登って、そのうちで
落ちて
死んだものがあったろう。それからだれも
登ったものがないだろう。」
と
甲がいいました。
「だけれど、その
家来はいっしょうけんめいになって、
登ったんだって、おじいさんがいったよ。」
と
丙がいいました。
「そうかい。それからどうなったい。」
と
熱心に
乙と
甲の
二人が
問いました。
丙はまた
語り
続けました。
山へ
登ると、
巫女がいったように
石の
盃がありました。そしてその
中に
清らかな
水がたまっていました。
家来は
携えてきた
小さな
徳利の
中にその
水を
入れました。そして
早くこれを
携えて、
国へもどって
天子さまにさしあげようと
思って、
山を
下りました。
家来は
山を
下って、
海辺へきて、
毎日その
海岸を
通る
船を
見ていたのであります。けれど、一そうも
目にとまりません。
毎日、
毎日、
沖の
方を
見ては、
通る
船を
見ていますうちに、そのかいもなく、ふと
病にかかって、それがもとになって、
遠い
異郷の
空でついに
死くなってしまいました。
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