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道の上で見た話_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网
日期:2024-10-24 10:29  点击:3397
 

三つのお人形

小川未明

一


外国人がいこくじんが、人形屋にんぎょうやへはいって、三つ並ならんでいた人形にんぎょうを、一つ、一つ手てにとってながめていました。どれも、同おなじ人形師にんぎょうしの手てで作つくられた、魂たましいのはいっている美うつくしい女おんなの人形にんぎょうでした。
一つは、すわっていましたし、一つは立たっていました。そして、もう一つは、手てをあげて踊おどっていたのであります。
どれを買かったらいいだろうかと、その外国人がいこくじんは、ためらっていましたが、しまいに、つつましやかにすわっているのを買かうことにしました。それを箱はこにいれてもらうと、大事だいじそうにして、店みせから出でていってしまいました。
残のこった、二つの人形にんぎょうは、たがいに顔かおを見合みあわせました。そして、そばに、だれもいなくなると、お話はなしをはじめたのです。
「とうとう、あの方かたは、いってしまいましたね。」
「わたしたちは、いつまでもいっしょにいたいと思おもいましたが、だめでした。このつぎには、だれが先さきにお別わかれしなければならないでしょうか……。」
二つの人形にんぎょうは、心細こころぼそそうにいいました。しかし、こうなることはわかっていたのです。美うつくしい、三つの人形にんぎょうが、はじめて、このにぎやかな街まちの店みせさきにかざられたとき、通とおる人々ひとびとは、男おとこも、女おんなもみんな振ふり向むいてゆきました。きれいなお嬢じょうさんや、奥おくさまたちまでが、うっとりと見みとれてゆきました。人形にんぎょうは、世よの中なかに、自分じぶんたちほど、美うつくしいものはないと思おもうと鼻はなが高たかかったのです。そして、だれでもが、にこやかな顔かおつきで、やさしい目めをして自分じぶんたちをながめますので、どこへいってもかわいがられるものと考かんがえました。
「どんな人ひとに、わたしは、つれられてゆきますかしらん。」と、三つの人形にんぎょうは、口々くちぐちにいって、行ゆく末すえのことを空想くうそうしますと、なんとなく、この世よの中なかが、明あかるく、かぎりなく楽たのしいところに思おもわれたのでした。
「どこへいっても、おたがいの身みの上うえを知しらせ合あって、おたよりをしましょうね。」と、お人形にんぎょうたちは、いったのでした。いま、二つになりました。
「あの方かたは、外国がいこくへつれられてゆくのでしょうか。」と、踊おどりながら、一つの人形にんぎょうは、立たっている人形にんぎょうにいいました。
「そうかもしれません。わたしは、外国がいこくへなど、ゆきたくないものです。けれど、あの方かたは、おとなしいから、どこへいってもかわいがられると思おもいます。」
こんなことを話はなしていると、ふいに、店みせさきへ、娘むすめさんが立たちました。そして、じっとふたりをながめていました。お人形にんぎょうは、急きゅうに、口くちをつぐんでしまいました。
娘むすめさんは、内うちへはいって、立たっている人形にんぎょうを指ゆびさして、見みせてくれといいました。それから、それを手てに取とってよく見みていたが、
「これをくださいな。」といった。
こうして、二つの人形にんぎょうは、ついに買かわれていってしまいました。そして、あとには、踊おどっている人形にんぎょうがただ一つだけ残のこったのであります。三つの人形にんぎょうは、こうして、べつべつになってしまったので、もはや、お話はなしをすることもできなくなりました。
「私わたしたちの親したしかったお友ともだちは、どうなったであろう……。」と、三つのお人形にんぎょうは、たがいに、胸むねのうちで思おもうよりほかなかったのです。
 

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10/02 16:23